仕事山行・白山加賀禅定道

例年の夏の仕事山行。今回は荒島岳と白山がターゲットで、2013年の同時期にも同じ山に行っている。ただし、13年は荒島岳のふもとの幕営地で雨に降られ、冬用フライシートをまちがえて持ってきたために1つのテントが漏水、白山では幕営できず、南竜ヶ馬場のケビンを借りるはめになり、さらに御前峰へのアタック途上で雷雨に遭って二度目のアタックで頂上を踏んだ。このような忌まわしい記憶(荒島岳ふもとでのアクシデントには私は立ち会っていない)がある。

それから5年経ち、例年になく早い梅雨明け、そして連日「烈暑」という条件の中、今回は白山からの下山にロングルート、加賀禅定道を選択した。白山は標高2702mの御前峰とその周辺の火口湖ばかりではない。御前峰だけに注目すれば、高山の中ではかなり短時間で山頂に立つことができ、お花畑もあちらこちらに見られるお手軽登山が可能だ。しかし白山の稜線は南北に長く、南の岐阜県西部や福井県東部から別山を経るロングアプローチが可能だし、北部は中宮温泉や岩間温泉、今回の一里野温泉などへ長い稜線を歩くこともできる。東西の横断も可能だ。多くは昔から修験のために使われてきたルートでもあるが、近代登山と昨今のマイカー登山の隆盛で南北の長いルートで人に出くわすことは稀である。そのぶん、なかなか手ごわいルートともいえる。

7月24日
朝いちの新幹線「かがやき501号」で金沢へ。金沢から登山口の市ノ瀬への路線バスもあるが、朝東京から新幹線でアプローチすると金沢駅6時・7時発の急行バスには乗れず、歩き始めが12時を回ってしまう。そこで、JRで金沢から小松まで行き、乗合タクシーに乗って1時間早く登山口にたどり着く。
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別当出合から砂防新道を登る

登り始めは11時20分。砂防新道という現在人気の最短ルートで登る。13年は雨の中の登山だった。その記憶も薄れていて、登り始めの石段の急登行が辛い。中飯場というところにトイレと水場があり、みな休憩するところだが、またそこからの登りがきつかった。バルトロ75を背負うのは6月の金峰山以来だが、今回は個人持ちの食料、水、バーナー、簡易浄水器まで背負っている。重い。最短のルートということは平坦地が少なく一本調子の登りであり、次に休憩するポイントの甚ノ助避難小屋までがとても長く辛い。コースタイムよりも時間を使ってたどり着いた。ここで大休止。幸い、午後になっても雨が降る感じはしない。甚ノ助避難小屋からしばらく登った南竜分岐からは20分のトラバースで南竜ヶ馬場の幕営地に着く。白山には大きな登山小屋が2箇所あり、一つは室堂センター(750人も泊まれるらしい日本屈指の山小屋。ただし幕営不可)、もう一つが南竜ヶ馬場(150人宿泊可。少し離れた場所にケビンが数棟、幕営地は広く水は豊富、高山植物に囲まれロケーション最高、しかしトイレ老朽化し強烈な臭い)がある。南竜ヶ馬場の幕営代は1泊300円と破格に安い。今どきの北アルプスあたりの幕営代は高すぎる。到着は15時だった。マイテント(カミナドーム2)を張ってくつろぐが、夕方までは暑い。
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お花がきれい(としか言えないのが悲しい)
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別山を望む
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崩壊しそうなトイレ棟を除けば天国のような南竜ヶ馬場の幕営地

7月25日
天気はよい。この日は朝5時30分に出発して御前峰とお池めぐり。サブザックや大型ザックの雨蓋だけで身軽に行動する。展望新道というルートで室堂まで登るが、途中によさげな水場が2箇所ほどある。高山植物が豊富で、高度を上げていくと植生も変わっていく。室堂が近くなるとかなり密度高くクロユリが咲いていたり、コバイケイソウやハクサンコザクラが目立つようになる。しかし高山植物の花の名前がいつまでたっても脳内で豊かにならない。歴史の人名はよく記憶できるのに、どういう訳だろう。
御前峰は数年前のようにガスることもなく、風も穏やかでよかった。剣が峰は登れないはずだが、山頂に立つ人が1名。御前峰から下り、剣が峰や大汝峰の間にある池をめぐって歩いていく。大汝峰の登りは岩場で、少年たちもあまり登りたくなさそうなのでパスして室堂センターへ下る。南竜ヶ馬場への帰路はトンビ岩コースを歩いたが、岩場の急下降部分が少しあって、翌日の登りに使うにはしんどそうだ。
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展望新道を歩く
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御前峰山頂から大汝峰方向を望む
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剣が峰はその名の通り
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私でもわかるハクサンコザクラちゃん

7月26日
いよいよ山頂部を越えて七倉山・四塚山方面へ縦走する。5時50分発。室堂までは年長者だけが持った水を回し飲みして耐え、室堂からは年少者も年長者も水を各自2L以上満タンにして歩く。なぜなら、加賀禅定道の水場に期待ができず、この日宿泊する奥長倉避難小屋にも水がないからである。私もかれこれ4L弱は背負った。ザックがずっしり。室堂で子供たちを連れて毎年白山登山をしているらしい40代と思しき女性ガイドから、私はもう45Lザックが限界だけど、百四丈の滝が見えるから禅定道はいい、と言われる。確かに幕営なしで禅定道を45Lクラスのザックで歩ければもっと軽快でベストだろう。70L以上のザックで歩く道ではないことは後にわかった。腰もついでに痛くなった。
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室堂センター
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2600mまで登る

御前峰の中腹を巻いて火口湖のある場所を通過し、大汝峰の西側の巻き道をたどる。昆虫研究をしているように見えた男性と会ってからは、誰一人ともスライドしないし、前後に登山者は全く見かけなくなった。御手水岩という岩があり、その脇には宿坊があったと思われる石垣の残骸があった。いまや白山北面にはあまり人が来ないようだ。七倉山への登りがとても辛そうに見える。これから尾根を下っていくのだがアップダウンはそれなりにあり、小ピークに登り下るルートが尾根が狭いゆえにすべからく直登・急下降なのである。重いザックでは辛いゆえんだ。四塚山で標高2500m。そこから2100m台へ下降していく。稜線上にある油池という水たまりから下方に水場があると標識に書かれているが、実際降り始めてみるとザレた急下降の道になったので諦めた。天池という稜線上の池は比較的大きめだが、ここで池の水を補給するにはかなり勇気がいる。もともと室堂から多くの水を運んで来ているので、いまさら補給したくもない。

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御手水岩(左端に窪みがあるが干上がりそう)
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天池と四塚山

天池に向かうトラバース道の途中に小さな雪渓が残っていて、斜度もあって雪も硬めなので少年たちには雪渓を下から巻くようにさせた。雪渓を私が横断してみるとやはり雪慣れていないとここは難しい。キックステップで足場をきちんと作れることが前提である。
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四塚山山頂のチングルマと塚(ケルン)
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写真中心部の小雪渓の横断は慎重に

標高2000mを割り込んで樹林帯になってきた。足下は借り払われた笹が落ちていて脚の置き場が見えにくく、下手をすると足をひねる。肩のあたりにも低木が迫っている。フラフラしながら1750mほどの奥長倉避難小屋になだれ込む。15時。他に宿泊者はないが、2階の引き戸が外れている。これは雨のときに吹き込みそうだし、これから冬になったら釘などで止めないと雪が入り込んで困る。我々では修繕できないので扉を立て掛けて窓を下半分カバーしておいた。台風で水浸しにならなければいいが。
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登山道から見える百四丈の滝
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奥長倉避難小屋

この日の夜は暑く、また食欲も湧かず、提供された夕食がノドを通らない者がいた。私も水をかけて流動食化しないとノドを通過しない。疲れがピーク。

7月27日
下山コースタイムは3時間強で、2ルートある。檜新宮参道は標高1000mから急下降があるのでパス。多少距離は長くなっても、加賀新道を使って一里野スキー場のゴンドラ駅近くまで下れば林道がある。林道の方が斜度は緩い。この日も樹林帯の中を狭い尾根をひたすら歩く。風もなくなり、汗が乾かないのでぐっしょり。6時から3時間かかって林道に下り立ち、ひたすら林道を歩く。ローカル色が濃いスキー場の中の迂回コースになっている林道を歩いて一里野のゲレンデボトムに着いたのが10時40分。11時オープンの温泉施設「天領」で汗を流して清涼飲料水をがぶ飲みし、13時30分のコミュニティバスに乗る。乗る間際、近所の民宿のおばさんが冷えたキュウリとトマトをおすそ分けしてくれた。野菜が全く摂れていなかったので最高のご馳走だった。

幸い、雨にたたられず縦走が終了した。加賀禅定道はタフな道だった。飯豊連峰の縦走路を思い出したが、白山の方が人影がなく、水場や避難小屋もない。もう好んで二度と行きたくはないルートの最右翼になってしまったが、今回歩き通せたことは幸いだった。
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