ステップソールでかぐら雁ヶ峰・霧ノ塔へ

今シーズンはどうにもバックカントリーへ出るチャンスが少なかった。これでやっと3回目、すべて日帰りである。出られなかった理由はいろいろあるのだが、今回に関しては天気が下り坂、というのが山中一泊のツアーを断念した理由。結局日帰りでかぐらスキー場から雁ヶ峰・霧ノ塔を周遊する例年のコースをステップソールで歩くことにした。ステップの機動力を使って登っては降り、登っては降るコース取りである。

GW最終日とあって、ゲレンデが混む可能性があり、朝7時に現地集合。今月2日の三浦カヤックと同じメンバー、吐月工房氏(フィッシャー・GTSクラウン&ビンソン)と葛飾のU氏(フィッシャー・アウタバウンズクラウン&T4)と私(カルフ・10thマウンテン&T4)の3人。

かぐらメインゲレンデトップで最上部のリフトが動きだす9時を待つ。30分ほど待って、かぐら第5ロマンスリフトが動きだす。いつもはボーダーやスキーヤーがどっと連絡コースに殺到し、バカボーダーに板やストックを踏んづけられ口論になることがある(昨年あった)のだが、今日はこのロマンスリフトが動く最終日だというのに少なめ。しかも皆スキーヤーで、ゲレンデ全体にボーダーが少ない。

ステップで出発

9時20分、ゲレンデトップの1830mからおもむろに歩き始める。シール装着の時間が省け、非常に快適なスタートであるが、最初はステップで登れる限界斜度が体にしみ込んでいないので時々前のめりになる。神楽ヶ峰へつづく緩い尾根の右側から鞍部へトラバース、1984mピークへ斜登行で巻きながら登る頃にはもう強烈な日差しと暑さで汗だくである。先行者は中尾根を滑るという男性と、この日コースの所々で出会うことになるリピーターの山スキーヤーのおじさん。

巨大キッカーが・・

よく喋るおじさんで、聞きもしないのに昨日の状況や連休前半に何も知らないで上がってきたヒトを連れて歩いたことを話してくれた。このあたり、春になると何の装備も持たず、どこを滑ればいいかも知らずに板を担いで登ってくる輩が結構いるので、危うさを感じることが多い。そういう輩には冷たく接したほうがいいと私などは思っているが、このリピーターおじさんはまるでボランティアでガイドをしているかのようなのだ。この日も午後になってコース上で再会した時、明らかに同行者ではないゲレンデスキーの男性を引き連れ、解説をしていた。



ステップソールの我々は小休憩後そのまま稜線を滑り始める。デコボコの多い稜線を降り、小ピークを一つ登りながら巻くと、急な稜線にぶち当たる。しばらく休憩していたらリピーターおじさんが板を担いでツボ足で来たので、先行してもらい、こちらもこの急な稜線をステップで刻むのはやめ、板をザックにくくりつけておじさんが切ったツボ足ステップを拝借して登る。
このピークには『雁ヶ峰』と標識があるのだが、地形図にはそのような記載はなく、雁ヶ峰は黒岩ノ平を挟んだ北東方向の1667mピークに書かれている。初めてここへ来た時からどちらが本物の雁ヶ峰なのか悩んでいたのだが、リピーターおじさんは標識があるところが雁ヶ峰で地形図が間違いだという。これを書きながら考えてみると、『雁ヶ峰』の黄色い標識が付いている木の方向に地形図に書かれた雁ヶ峰がある、ということではないのか、とふと思った。いずれにしても、夏道も稜線に付いている場所なので、湯沢町の名前を冠した標識についてははっきりさせて欲しいものだ。

スキーを担いだ唯一の稜線
実際肉眼で見るともっとキツイです



霧ノ塔までチョッカル。ところどころブレーキがかかる雪なので前転する可能性もあったが、難を切り抜けて霧ノ塔のピークを踏む。リフト降り場からここまで約2時間弱である。リピーターおじさんはここで休憩としているが、我々はやや北東に外れたピークでザックを下ろし、軽く行動食をとる。まだ11時。ここにザックを置いて、黒岩ノ平方向の沢に向かって2回ほど空荷で滑る。登りもシールを貼り返さなくていい上、シール装着時の鈍重さがなくて快適。やはりザラメの季節はステップが最高である。

空荷&軽装で滑る
縦溝があって油断ならない

大汗をかいたところでザックまで戻り大休止とする。周辺を見渡しても、休日でいい天気にも関わらずスキーヤーがほとんどいない。スキー場からの音楽もここまでは聞こえないので、雪山を独占している感が強い。

12時20分くらいに下降に入る。いつもは黒岩ノ平と千倉ノ引上げの間にある明瞭な尾根に乗って途中から沢へ滑り込むのだが、今回はステップの機動力を使って千倉ノ引上げ最上部の1886mピークへ移動し、沢を2本横切る感じで滑って登ることにした。樹間の距離が空いていて気持ちよく滑ることができた。黒岩ノ平の北の沢への滑降で初転倒。雪が重くなり、雪上に落ちている枝が気になり、積雪量が減ってきているので薮も出かかっている。慎重に滑らないと、足元不安定なステップ板では登りよりも滑りの方に気を遣う。リピーターおじさんが若いゲレンデスキーの男性を連れて黒岩ノ平の方から降りてきて、先行する。

地形図上の雁ヶ峰までわずかな登りとなるが、そのままステップ板で登ってきたら、リピーターおじさんの連れの男性が「そのスキーはなぜ登れるんですか?」と問うてきたのでソールのうろこを見せてあげた。普通のゲレンデスキーヤーにとってはスキーのソールに雪面と干渉するものが存在するという発想はまずありえない話だし、山スキーヤーもビンディングの特性(つま先が支点)から決して使えないのがステップソール板である。テレマークスキーヤーの特権なのである。

セッケイカワゲラ発見
なぜかアメンボがいた

ただし、ここから先のやや急斜面・腐れ雪ではかかと固定のフラットソールスキーにかなうはずもない。先行した二人に追いつくはずもなく、ヨタヨタとステップ3人組で降りていく。最後の急斜面は薮が濃くなってきていて、もう次の週には滑れないだろう。ゴンドラ線に平行する連絡コースに降り立ったのが14時過ぎ。最後の最後に板をつけたままで半薮漕ぎとなった。アクセスしやすいコースで、決して達成感のある新規のコースではないが、ステップソールでシールを一切使わずアップダウンを繰り返したために、非常に充実した周回となった。

薮をかき分けフィニッシュ

硫安を蒔いたゲレンデは意外なほど滑り、ヒザが痛くなった。帰りは田代エリアの立ち寄り湯で休憩し、三国峠を越えた。関越渋滞が予測以上に長く、北関東道と国道122号、館林からの東北道で19時30分自宅着。あと一回、乗鞍あたりへ滑りに行きたい気持ちもあるが、もうあがくことはせずカヤックをしたほうがいいのか、ものすごく悩んでいる。