利尻・礼文の旅

今年の夏の仕事山行は利尻山登山と礼文トレッキングとなった。
24日に利尻山登山を無事済ませ、25日からはフリーにしてもらってその日の午後に礼文島西海岸をカヤックでソロツーリングした。しかし、26日からの道北の天気は悪く、それ以後ほとんど何もすることができなかった。

利尻登山と礼文カヤックツーリングの日の天気が最高だったのだから、達成感は非常にある。

このエントリでは利尻・礼文へのアプローチなどについて日録風に綴ってみる。

7月21日(水)
若い同僚と羽田発の飛行機で函館へ。北海道にしては暑く、黙っていても汗が吹き出てくる。
十数年ぶりの函館駅は新駅舎になり、駅前広場が広々していた。函館から特急「スーパー白鳥」に乗って長万部へ。長万部公園キャンプ場にて少年たちと落ち合う。キャンプ場は駅から4kmほど内陸に入った高速道路のそばだが、非常に静かでいい雰囲気だった。たまたまこの日の受付担当のおねいさんがてきぱきしていてなかなかの美人。夕方、少年たちがやってきてレトルトカレーの夕食となるが、食べている間にも蚊がわんさか体にまとわりついてきて閉口する。夜、ラジオを聴いていたら翌日からの天候は下り坂のようだ。週末の利尻・礼文の予報もよくない。先が思いやられる。夜半に雨が降った。
函館駅

スーパー白鳥

スーパー北斗

ファーストライト

7月22日(木)
長万部駅

長万部から予定より一本早い「スーパー北斗」にて札幌へ。車内販売のおねいさんが美人だったのでついコーヒーを注文してしまった。予定の列車だと札幌で駅から出ることも叶わない乗り継ぎだったが、約2時間の余裕ができたためにアウトドア用品店の秀岳荘本店へ。ヒザサポーターを忘れてしまったので、簡易なベルト式のものを一つ買う。2年前はここでガスボンベを買ったっけ・・昼食は駅ビルで海鮮の定食。これから食事が貧相になるのでしっかりいいものを食べておきたい。

サロベツ(3両編成)

昼過ぎの特急「サロベツ」に乗って稚内へ。約5時間の列車移動だ。旭川を過ぎるととたんに大自然のまっただ中を走るようになる。列車の行き違いやエゾシカの線路への乱入で時々ストップしつつ、午後6時過ぎに稚内着。当初、高台の公園キャンプ場へ移動する予定だったが、翌日のフェリー出発時刻が早く、移動の時間がもったいない上、小雨も降っていたのでライダーやチャリダーのように北防波堤ドームの下でテントを張ることにした。ドームの下まで雨が吹き込んでアスファルトが濡れていた。
今回、持参したのは亡き友人HBYの遺品のBDファーストライト。透湿性のあるエピック素材を使った黄色いシングルウォールテントだ。ポールがスリーブや吊り下げではなく、テント内部で突っ張るのが特徴。フロア素材がシルナイロンで弱いため、エアライズ用のフットプリントの上に設営する。だが暗い中で慌ててテントを設営したため、1本のポール先端でテントウォールとフロアを傷つけてしまった。アスファルトの上に設営したことも原因だ。気付いたのが夕食を食べて戻ってきてからだったので、小さな穴が空いてしまった。少々ガックリする。

北防波堤ドーム

7月23日(金)
この夜、防波堤ドームの脇の道を爆走するバイクや車があり、なかなか静かにはならなかった。そして、朝4時に起床してから少年たちの一人のザックが見当たらないという。どうやら夕食で不在の間か就寝してから車で乗りつけてザックを一つ持ち去った輩がいたらしい。幸い中には貴重品は入っていなかったが、ザックの中の登山靴と食糧が消えた。朝5時に派出所に少年と出頭して被害届を出すことにしたが、被害届を提出するとなると調書をとらなければならず、現場写真を撮る必要も出てくるので厄介なことになってくる。結局乗るフェリーを1本遅らせることになったが、調書は完全には取りきれなかった。被害届を出すか、簡易に遺失届にするかは礼文島から帰ってきてから結論を出すことにして、パトカーでフェリー乗り場に出港10分前に滑り込む。
警察にはザックの管理が甘いと言われ、まさにその通りではあるが、ザックごと持っていくという行為には新宿駅や東京駅でもお目にかかったことがない。札幌駅でも駅舎脇に2時間以上ザックを放置してまったくいじられた気配はなかった。当然山の中ではあり得ないことなので、油断があったことは事実だ。警察官が朝からねちっこく事細かに聞くのは仕事だからしょうがないだろうが、礼文から帰ってきた後の対応のそっけなさから振り返るとイヤらしい扱いだった(礼文から帰ってきたら列車に乗る前の3時間で調書の続きを取り、パトカーで送迎するとまで言っていたのに・・・)。

気を取り直してフェリーの人となる。北海道の離島を結ぶハートランドフェリーはきれいな新しい船を使っていて、料金も比較的安く(利尻・礼文への片道は2,000円強)、快適だ。

利尻島の鴛泊(おしどまり)に到着すると激しいタクシーの勧誘。それをかいくぐって北麓キャンプ場まで約4km歩く。全部舗装路だが標高差は200mある。少年たちの中の最年少の新人の足取りが重く、だんだん遅れが目立つ。大人は3人ついているので、次第にマイペースになってしまい、私が一番早くキャンプ場に到着したが、最後尾の新人とサポート役の少年らが到着したのは30分後だった。利尻登山が思いやられる。

テント設営。ファーストライトのキズが気になる。ここは連泊なのでこの間カラファテで買った前室を装着。快適なわが家になった。貧相な昼食の後、ポン山(444m)に登り、姫沼まで歩く。晴れたのでポン山からの利尻山が素晴らしく、海の眺めも最高である。姫沼までのトレイルはトラバースしながら涸れ沢を何本か横切るルートで、この島にはヒグマがいないから安心して歩けるが、人っ子一人歩いていないのでちょっと寂しいルートだった。



ポン山から利尻富士

ポン山から礼文方面

姫沼の逆さ利尻山

7月24日(土)
礼文が見えた

利尻登山。パーティ行動なのでまさに10時間近くの行動になった。登山の様子は別のエントリで。登山後、2kmほど下の温泉施設で汗を流す。テントで気象予報を見たら何と礼文島カヤックツーリングを予定していた26日、27日は曇りないし小雨で、南西風が強まるという。絶体絶命か?

7月25日(日)

乗客の手から餌をもらうウミネコ

朝9時のフェリーで礼文島へ。10時過ぎに香深に到着し、ここで少年たちと別れ、仕事から解放される。予約していた民宿「ゆうなぎ」のおにいちゃんが運転する島内唯一のプリウス号で島の北部の集落、船泊へ。車に同乗しながら礼文島が南北に長い島だということをあらためて実感する。そして、利尻もそうだったかもしれないが、礼文島の東海岸には集落が点在しているものの、畑がほとんどない、ということに気付かされた。島民のなりわいは農業ではなく、漁業か会社勤務、自営業ということになるのだろう。庭先での家庭菜園さえ見かけられないのはどういうことだろう?
到着後、あらかじめ送っておいたカフナを組み立てる(ちなみに配送料金は「ゆうパック」で1,700円だった)。たとえ途中までしか漕げないとしても、この日の午後勝負である。その後のツーリングは別エントリで。

7月26日(月)
夜半から雨が降る。小雨にはなったが、予報通り南西風が吹き抜けてくる。次第に民宿の目の前の船泊湾にもウサギが飛び始める。前日に漕いでおいてよかったと胸をなで下ろす。が、この日はもうやることがない。トレッキングをこの強風と小雨の中で一人でやろうという気が湧かない。体も登山とカヤックで疲れている。

礼文神社参道から船泊集落

礼文神社

軽い散策に切り替えて、船泊集落から2kmほどの高山植物園へ。レブンアツモリソウやレブンウスユキソウを目の当たりにする。海岸べりではもう高山植物も終わってしまっているので、培養されたものとはいえ実際に目にすることができてよかった。その後、九種湖の周遊路を一人歩く。礼文にもヒグマはいないので、安心だ。少年たちがテントを張っているキャンプ場に近づいた時、胴長の小動物が目の前を横切った。テンかイタチであろう。キャンプ場は集落に隣接しているので、こんなところでお目にかかるとは思わなかった。


アツモリソウ(右)とウスユキソウ(左)

九種湖畔にポニーが1頭

いったん宿に戻り、近くの食堂でラーメンを食べてからカヤックを近くの郵便局で送り返す。民宿「ゆうなぎ」は出艇するにもカヤックを郵便局から送るにも30m程歩けばよいのでうってつけの場所にある。「ゆうパック」料金は、局員に食い下がったものの往路の安い料金にはならず、しかしなぜか160サイズに縮んで1,900円だった。

午後はさらに風が強まった。幸い雨は止んでいるので、船泊の東にある金田ノ岬までアザラシ君たちを見に行く。
船泊の海岸でウインドサーフィンをやっている方が一人いたので、それを見学がてら砂浜の穴あき貝を拾う。落ちている二枚貝の貝殻にはほとんどといっていいほどきれいな穴が空いている。調べるとツメタガイという巻き貝が二枚貝の殻に穴をあけて食べた跡なのだそうだ。穴にヒモを通せばペンダントになる。いい場所に穴が空いている貝殻を4つほど選んで拾った。砂浜を歩くと飛んできた砂で足元はおろか耳の中まで砂が入ってくる始末。

船泊湾に白波が立つ

寂しげな道路をひたすら歩き、岬を回ったら風が遮られており、案の定アザラシ君たちが浅瀬で風よけをしていた。しかしなんでアザラシたちは体をのけ反って休んでいるのだろう?人間なら筋肉が辛くて数秒しかできないポーズだ。


岩礁で休むバナナ姿勢のアザラシたち

7月27日(火)
海況はさらに悪くなる一方なので、朝一番のフェリーで稚内へ戻る。予報では利尻水道の波の高さ3m。確かに水道の真ん中では船がかなりローリングした。だが酔うほどではない。普段のカヤックでのロール練習の成果かもしれない。
YH桃岩荘の見送り

少年たちも同じフェリーなので、稚内警察へ出頭しようと電話で遺失届を出したいと話したら、パトカーでの送迎はなくなり、電話でコトは済んでしまった。かなり激しく雨が降っているが、ザックだけ宿泊予定のホテルに預かってもらい、中心街へ昼食に出かける。稚内の中央商店街はかなり寂しく、ロシア語の看板だけが目立つがロシア人はいない。やっと見つけた食堂で久しぶりに肉を食う。民宿泊まりでは毎食サカナベースだったのでちょっと嬉しい。その後また「サロベツ」に乗る少年たちと別れ、チェックインまでの2時間を潰すために駅前のシネコンで映画「必死剣鳥刺し」を観る。主人公トヨエツよりも吉川晃司の演技に魅かれた。
清潔なホテルに投宿、夕飯は道北の〆に寿司。天気がもう少し良ければサロベツ原野にでも足を伸ばすところだったのだが・・・

お約束の写真

寂寥感漂う商店街

7月28日(水)
ホテルでウダウダしてからオンボロの空港バスに乗り、12時発の便で羽田へ。市原上空から東京湾岸を飛んでいると、東京湾に白波が立っているのが見える。そしてスカイツリーがやけに目立つこと!
東京の殺人的な暑さに瞬殺された。