三岩岳・窓明山 直登と急下降

1週間前の安達太良山で筋肉痛が出なかったので、気を良くして翌週単独で登山することにした。筋肉痛が出なかったのは下りの大部分をロープウェイに頼ったからに相違ないのだが、現金なものでやる気だけは出てしまった。そろそろ、今まで行きたくても行かれなかった山は日和らずに行くことにしたいと思い始めるまでに至った。今年の夏は飯豊全山縦走か北ア裏銀座+笠ケ岳のどちらかをやってしまいたい気分である。

で、今まで行くことを繰り延べてきた山の第一弾は南会津町の三岩岳である。いつかスキーで登って滑りたいとずっと思っていたし、会津高原高畑スキー場をマイゲレンデにしている関係で行くたびに見つめている。そんな山に無雪期に登ったらどうなのか?無雪期の三岩岳登山もここのところずっと頭の中にあった。昨年の夏に仕事山行が尾瀬で、その帰りに登ってしまおうかと思っていたが、仕事は仕事として終わらせてまっすぐ帰ることにしたので繰り延べにしていた。

さて、地形図や先達のブログなどを見ると登山道がとても急らしい。標高差約1200mの三岩岳登山道だが、2本の登山路のうち、「国体コース」「旧道」などと言われている尾根コースが容赦ないようだ。できればこの道を選択したくはないが、問い合わせてみたら「新道」「黒檜沢コース」は何年か前の出水の被害で橋が流されて以後整備が行われていないらしい。一方で国体コースの方は6月26日の山開きに備えて数日前に整備がされているという。それではキッツイ登りのコースを歩いた方が無難だ。

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今回の装備は日帰り山スキー用の30Lザック(ドイター・フリーライダー30。最近加水分解でコーティングが剥がれてきている)。ツェルトやロングスパッツ、軽アイゼン(雪があったとしても少ないことはわかっていたので4本爪)なども持っていったが、雨具も含め使うことがなかった。急登に備えてプラティパスに2Lの水を入れていき、ハイドレーションシステムを用いたが、結局水は1L飲み、梅味のついたペットボトル飲料を500ml飲み干した。ピンチの状態が全くなかったので、ザックは行動食を取り出す以外に塗り直しの日焼け止めと虫よけハッカ油を取り出すだけしか用がなかった。

足回りは軽登山靴で、荷が軽いのでアディダスのテレックスファストRミッドを使った。この登山靴、ゴアテックスで軽量なのだが、シューレースがクイックレースで、登りはいいとしても下りでつま先を余らせて足首を締め込むのを怠り、下山途中でつま先が痛くなった。下山途中でしっかり締め込んでみたが、それでも急下降ではつま先に余裕がなく、足首を思いっきり締め込むと足首が痛くなり、歩いている途中で微妙なゆるみもあるようだ。靴底のグリップはとてもいいのだが、手でヒモを縛れた方が自分にはしっくり来る。



土曜日の夜に自宅を出て、道の駅「番屋」で車中泊する。真っ暗でろくに車も通らない中山峠を下って11時前に到着したら、駐車場には多くの車が止まっていた(釣りだろうか、登山だろうか?)。何とか1台分のスペースを見つけ、窓に目張りをして眠った。

翌朝5時起きして朝食とトイレを済ませ、登山口に向かう。会津高原高畑スキー場を過ぎて、閉鎖されてしまった「窓明の湯」への入口に登山届のポストがあるので届けを投函し、国体コースの登山口に近い路側帯まで戻って駐車、6時15分から歩き始めた。黒檜沢コースならば登山届けポストのあるシェードの上から始まる。

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登山口

すぐに急登が始まり、斜度が緩くならないまま高度を稼いでいく。無線中継アンテナでちょっとだけ斜度が緩んだが、急登は繰り返す。三岩岳の三ツ岩がときどき見えるが、まだまだ高度差は大きく、しだいにふくらはぎとアキレス腱が痛くなってくる。

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写真で見るより実際は急に感じる
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三ツ岩展望

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ところどころに金属板の案内がある

7時35分に沢コースとの合流点にたどり着いた。ここから緩くなるかと思いきや、1700mまではキツイ直登だ。ときどき登山道脇の曲がった木の幹に腰掛けて短時間の休憩を取りつつ、急登をこなし、湿原があらわれた。ハクサンコザクラの群落があった。1800mを少し越えた避難小屋にたどり着いたのは8時55分。ここまで標高差1000m強あったが、3時間かからなかった。上出来だ。まだ山開き前だからなのか、小屋には施錠してあり、外のベンチで行動食を食べる。ハエやブヨがまとわりついてうるさい。そこそこにして三岩岳山頂を目指した。ときどき息を整えないと厳しい。ここまで飛ばし過ぎたか?

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避難小屋手前の湿原
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避難小屋

三ツ岩が目の前に迫り山頂はもうすぐかと思ったら、もう少し高度を稼がないと山頂には着かないようだ。山頂には9時30分着、先行者が2名いた。
山頂からは大戸沢岳や会津駒、中門岳がよく見え、残雪もまだらにあるのが見える。近そうなのだが、夏道はない。たぶん会津駒山頂は混んでいるだろうが、三岩岳は静かな山だ。日曜日にこれだけ歩いて2名にしか会わないとは。

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大戸沢岳への稜線と会津駒
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三岩岳山頂のプレートは素朴そのもの

風で身体が冷えるので、行動食を食べて先行者が下り始めた後に自分も下りに入る。登ってくる人1名とすれ違った。彼もここまで全く人に出会わなかったらしい。避難小屋のすぐ上にある窓明山への分岐を折れ、踏み跡がやや少ない稜線を下る。山頂で会った先行者2名はここまでに抜いてしまった。下りきったら木道のある湿原だ。上からは池も見えたのだが、登山道はその脇を通ってはいないようだ。ワタスゲが咲いていたので写真におさめ、登りにかかる。稜線上にルートがあるのだが、ところどころ右側がザレて崩壊しており、少し慎重になる。標高差120mを登りきったら下山ルートとの分岐点で、窓明山山頂はそのすぐ上にある。振り返ると三岩岳がどっしりと構えている。窓明山山頂着は11時ちょうど。アンパンとパウンドケーキを食べて休憩するが、途中で抜いた人がいっこうに来ない。一人で山頂を独占するのは気分がいいが、寂しい。
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ハクサンコザクラ
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窓明山方面の稜線
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イワカガミに似てますが何ですかね?
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木道に沿ってワタスゲ
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なんだかとても鮮やかな色のツツジ
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三岩岳を振り返るとどっしり

下山にかかる。窓明山に向かう過程で尾根の斜度はわかったのだが、あまりにまっすぐ下っているので思った以上に急下降である。会津駒も尾根道が急だけれど、ここまで急ではない。三岩岳と窓明山にはつづら折れの登山道がほとんどなく、下りは登山靴のつま先を余らせて足首できつく靴ひもを縛らないとつま先を痛めてしまう。山頂で締め込んだはずなのだがもう痛い。尾根道が標高の高い方から笹・ブナ・松の樹林帯なので、幸い岩も少なく脚とヒザに優しい道なのだが、この急下降はさすがに参る。

家向山は地形図によると山頂まで行かずに手前のピーク直下の1490mあたりで巻き道になるはずなのだが、高度計は1500mを越えていた。そして登山道は手前の1520mピークを通過していたように思えた。1420mの鞍部からちょっと登ればトラバースなどと高を括っていて、結局標高差100m以上を登らされて息も絶え絶えだ。家向山への分岐など全く気付かなかったが、あとから振り返ってみるとトラロープが張られた向こう側がそのようで、山頂へは行かれないらしい。

その後も斜度は急になったり緩んだり。比較的斜度が緩み倒木が脇にあるようなところで腰を下ろすのだが、ザックを下ろすと熊鈴が鳴らなくなり、いつ熊が出てくるかと心の隅でおびえているので、あまりじっくりと休憩ができない。そのうちまた急下降になり、ますます休めない。家向山から巽沢山まで30分、巽沢山から国道まで30分と案内板にはあったが、コケないように歩幅を小刻みに下るので30分で下れるほど甘い道ではない。結局40分近くはかかる。

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巽沢山の三角点

最後に巽沢山山頂でちゃんと腰を下ろして休み、細い尾根の急下降にかかった。カニ歩きでないとこなせないような下山路で、右脚の外側の筋が痛くなってきた。これから帰りの運転もあるのに〜!国道を通る車やバイクの音が近づいてきて、でも高度計の数値を信じればまだもう少しあるだろうなと思っていたら国道が見えた。最後にやっと申し訳程度のつづら折れとなり、崩壊地を右手に見ながら降りたら国道脇の伐採箇所に出た。国道を200mほど歩けば駐車ポイントだ。到着13時。7時間で歩ききった。高度計は気圧が下がってきたために実際より高く表示していたようだ。家向山手前で見た標高と地形図の食い違いもそういうことだったのかも知れない。確かに窓明山からの樹林帯の下降では若干暗く感じていた。雨雲も出てきている。雨が降る前に終えることができてとてもラッキーな山行でもあったようだ。

帰りは冬の高畑スキー場からの帰りと同様に湯ノ花温泉で200円の共同湯に浸かった。いつも入浴券を買っている星商店前のスペースに何台もの車が駐車していて状況が冬とはだいぶ違う。星商店のお母さんに聞いたら七ヶ岳の山開きがあったそうで、下山後に湯ノ花温泉に立ち寄る人が多いそうだ。積雪期には渡れない渓流を木橋で渡って、今回は初めて「石湯」に入った。もちろん、シャンプーやボディーソープは置いていない。汗を湯で流して浸かるだけ。湯温は結構熱かった。道の駅「番屋」で蕎麦をおやつ代わりに食べ、中山峠に向かったら峠は雨になった。予報よりも早く天気が崩れているようだ。

いつもの西那須野塩原インターから東北道に乗ったが、北関東道とのジャンクションで軽い渋滞、佐野SAから先が激しく渋滞しているようなので、佐野SAから下道に降りた。藤岡から渡良瀬遊水池の脇を通って茨城県の五霞町を通り、新4号バイパスを使ったらスムーズに流れていた。そのまま4号線を千住まで走って帰宅は8時過ぎ。右脚は固まっていた。今回はどうやら筋肉痛が出そうだ。さらにアームカバーの上からヒジの裏を刺したブヨのかゆみはしばらく引きそうにない。ある意味くまタンには出会うよりもブヨの方がいやらしいかも知れない。