前日光林道(北部)

連休中になんとか目標を果たすことができた。前日光林道を日光から葛生まで、約80km走った。
前日光林道の北部には、和の代線、河原小屋三の宿線、前日光線、大荷場木浦沢線がある。すべて舗装され、前日光線などは直線&二車線だったりするのだが、一方で大荷場木浦沢線は佐野市の葛生側で倒木が激しく、通り抜けた後に通行不可のバリケードがあった。

今回は鹿沼市側からアプローチしたためバリケードはおろか通行不可の警告もなく、かなり下った後だったので強引に突破してしまった。自転車での突破はやめておいたほうがいいし、徒歩での突破も相当危険である。はっきりともう一度。

大荷場木浦沢線は倒木が激しく、通行は不可!

では、ツーリングのレポート。
朝6時31分北千住発の快速会津田島・東武日光行きに乗る。連休の中日なのでホームが混んでいる。この列車は6両編成で先頭2両が会津田島行き(昨年秋に乗れなかったやつ)真ん中2両が新藤原行き、後ろ2両が東武日光行きである。下今市駅で切り離される。扉左右以外はすべてクロスシートで自転車を置く場所がほとんどない。輪行には最悪である。週末は混むので、東武さんには編成を長くしてもっと新しい車両を導入していただきたい。特急料金を払わないセコイ客だが、朝、特急より早く着きたいだけだから意地悪はしないで・・

ということで、列車の中の様子は想像できるはずだ。最後尾のドアから乗ったがすでに浅草から席は7割方埋まっていて、偶然見つけた扉脇の二人席の空間に体をねじ込み、自転車を通路にはみ出ないように支えるので精いっぱい。それでも輪行袋に他の乗客の足が当たってしまう。春日部からまた多くの客(日光ハイキングの団体さん)が乗り込んできて、混雑はさらに激しくなった。定刻通り8時25分に東武日光到着、駅の前で輪行バッグを解く。同じ車両に乗っていたロード二人組はいろは坂を2往復するという。ルートの工夫がないなぁ。東武日光駅前で輪行袋を解いて自転車を組み始めた夫婦の一台はジャイアントMR4だったが、これはまああんまり遠出はしないだろう。隣で輪行袋を解き始めたのはランドナー&ウレタンマットで、キャンピングだ。行き先を聞いてみたら、金精峠を抜けて沼田まで行くらしい。大学の同じ部活の仲間を待っているところで、キャンプ場は湯ノ湖近辺だそうだ。

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駅前は観光客だらけ
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ささっと組みます。前輪のところには背負っているザック(ドイターRace)。右はキャンピングの学生の自転車

前日光林道へ行こうという人は当然なく、一人走り始める。走り出してすぐ、チェーンから異音がしたので見たら、シートステイに付いているチェーンフックからチェーンを外さずに40mほど走ってしまった。チタン車だとこういううっかりミスでも塗装が剥げるということがなくて安心。

まず国道を清滝へ。車の渋滞が続いている。今日のいろは坂はすごい状態になりそうだ。車列をすり抜けて、清滝交差点を右折したら急に静かになった。すぐに右折して、国道と有料道路をくぐり、県道277号線へ。これが林道和の代線から昇格した県道である。「やしおの湯」を左手に見ながら、急坂に入っていく。途中振り返ってみると、日光市街と女峰山がきれいに見えた。

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振り返ると女峰山
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つづら折れ

滝ヶ原峠にたどりつくと、道なりの左には「←小来川」とあるが、右へ入る。林道河原小屋三の宿線である。入り口に先週から何度も見た前日光林道全体の概念図があり、少し先に道路幅半分くらいのバリケードがある。通り抜け不可とは書いてないので、これは車幅の大きい車用であろう。進入する。

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正面の道に進入。大型車は無理。

しばらく登りが続き、少し疲れたので休憩。持ってきたあんパンを一つ食べ、そろそろ下りに入るだろうとと思ってウインドブレーカーを羽織るのだが、まだ登りが待っていた。ようやく下り始めたら、単独徒歩の外国人のお兄さんが歩いていて、挨拶したら、「この道はどこまでつながっているのか」と聞かれた。日本語が堪能な方なので、安心して日光方面への道案内をして、「やしおの湯」の存在も知らせてあげたら大変喜んでいた。それにしてもこんな山道を一人で徒歩旅行とは・・?

路面状況はあまりよくない。枯れ葉が堆積した部分が多く、枯れ枝・落石も路面上にたくさんある。所々に雪も残っている。標高は900m前後で、日光との標高差は400m。つづら折れを下りきって日光沢に沿った道路に出ると、山菜取りの車や釣りと思しき車が所々に止まっている。キャンプに来た車も見かけ、GWだなと改めて思う。

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雪だ!標高は850m程度だが・・

県道58号線、古峰原街道の一の鳥居に出た。過去にも来たことはあるが、大きな鳥居である。ここで持ってきたクリームパンを食べて休憩。その後古峰神社へ登り始めるが、一度360mまで下った後に700m近くにある古峰神社へ登るのは辛い。しかも直線的で日陰がなく、交通量も多い県道では、脇を抜かれるたびに人力の無力感も強まり心がくじける。途中一度休憩して、何とか登りきる。11時近くに神社に参拝する。どうということもないよくある神社なのだが、前日光山地に散在する寺社は天狗を祀っていることからも修験道の拠点であり、修験者が使った道を林道として開削し直したという説がネット上にあることからしても何となく厳かな感じがしてしまう。

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古峰神社一の鳥居
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登り疲れたので待避所で休憩。桜はもう萎びてしまっています。
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私にしてはめずらしくこういうところで参拝。以後つまらない林道なので写真を撮らなくなってしまった。

店に立ち寄ってしっかり休憩しお昼を食べるほどまだ腹が減ってはいないので、前日光線のトンネルに進入する。ずっと2車線の道路で、射撃場を抜けてストレートに山腹をトラバースしている。こういう道路は苦手だ。標高800〜850mあたりをトラバースして、「つつじの湯」への下り分岐とさらに直進すると、道幅も狭まり、本来の林道の姿になる。地図上で見ると激しい上り下りはない区間なのだが、実際には疲れた体に辛いボディブローのように効いてくる。自転車にはスーパーローギアが付いていて、自転車を作る時には「お守り・保険」として付けたはずだったのだが、「お守り・保険」どころか常用しているのが現状だ。いつのまにか「お守り」ギアを使い果たして林道を歩くような速度でエッチラオッチラ登っている。まあそういうもんだよな〜と思いながら、連休なので所々で車と対向したりバイク軍団に抜かれたりしている。それにしても排気音のウルサイ同じ型のバイクでつるんで走るのは止めにして欲しい。こんな静かな林道まで来るなら一人で来いよ。頭に来たから、頂上でバイク軍団に先に行かせ、下りで煽ってみた。道幅が狭くて落石なども多い上にあちらは集団だから遅くなる。こちらは単独だし、スキー感覚で自転車を操っているので狭い道での下りならオンロードバイクには負けない(つもり)。少々効果はあったかもしれないが、途中で登りが入ったのであっという間に引き離された。その直後に車にも抜かれた。あーあ、現実はこんなものか・・

思川に沿った県道15号線の「山の神」で出た。ここのそば屋で昼食でもいいなと思ったのだが、駐車場に車・バイクがいっぱい止まっていたので断念。先週の土曜日とは条件が違う。県道脇に止まって行動食で腹を満たしてさらに先に行く。と、後ろから軽快にママチャリで登ってくるおじさんが!この人は確か、「快汗!自転車ライフ」という番組にも出た人では??普段から200kmくらい走り、ブルベにも出ている方とお見受けした。ただ、かなり軽快に坂を登っていってしまった上、その後の林道でも会わなかったので粕尾峠方面に上っていったのだろう。

県道から左手に下るように分岐しているのが、今日最後の林道、大荷場木浦沢線だ。沢沿い部分ではまだ傾斜が緩いが、沢から離れるつづら折れ部分から急になりそうだったので手前で休憩する。川口ナンバーのスズキバーディのおじさんがニッコリ笑いながら抜いていったのは記憶しているが、私はもっと他にも多くの車やバイクにこの林道で抜かれていると思っていた。実際には、パジェロミニ1台とホンダXLR1台、そしておじさんのスズキバーディの3台だったらしい。

疲れた体にむち打って、鹿沼市と佐野市の境にある尾根(標高950m)を目指す。何とかたどり着いて、あとは葛生まで一本道でひたすら下り、というところになって、対向するパジェロに止められ、この先倒木があって通れないと言われる。車なら通れない道路でも、自転車やバイクなら行かれることは多いので、抜いていったバイクなどが戻ってこないから「行ってみるだけ行ってみる」と告げ、さらに下る。XLRの人が止まって休憩していたのでこちらから声をかける。聞けば、倒木を何本もクリアしたのだが、どうしてもオフロードバイクではくぐり抜けられない高さの倒木があって断念して戻ってきたという。オフ車で突破できない、となるとかなりコトだ。でもオフ車は持ち上げることはできないから、腰より高いところにある倒木はまず無理。私のシクロクロス自転車なら肩に担げるし、いざとなれば倒木の向こう側に自転車を下ろしておいて後から自分が倒木を越えるという技も使える。倒木が始まる箇所がかなり下だから考えたほうがいい、と言われたが、もう来た道を上り返すのもねぇ・・。スズキバーディのおじさんが登り返してこないので、ここでも「行くだけ行ってみる」と嵌り込んでいく。

後から考えるとよくないパターンに入り込み始めていた。さらに下っていって、もう秋山川の最奥集落までの標高差(約600m)の3分の1くらいは下っていたと思う。ここから来た道を上り返していれば、これから始まる苦労はしなくて済んだかもしれない。

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倒木区間開始。これは序の口で右をくぐる。おまけにデカイ落石も

バーディのおじさんに会ったのがおそらく標高700mくらいだろう。バーディのおじさんは引き返してきたが、「歩きか自転車なら大丈夫」と根拠のないことを言う。抜けてきた人なら言えるセリフだが、引き返してきた人はどれだけの状況なのか不明なままに言うことになるからあまり信用してはいけない。でもこちらはリスクを背負う覚悟はできた。倒木区間に突っ込む。秋山川に出会う直前のつづら折れ区間から倒木区間は始まった。つづら折れなので先が見え、見えた場所には倒木がない。ということはあそこまで行けば倒木区間は終わり、という淡い期待を持ちながら、倒れた杉の木をくぐり、トップチューブをつかんで持ち上げ、時にはトップチューブを肩に担いで倒木を越える。

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どうしたらいいのさ?自転車持ち上げて越えた。
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こういうの、厄介。枝が濃くなければ山側でくぐるけど・・

現実は甘くなかった。倒木区間は断続的に続き、サイクリングというよりは「山サイ」に近づき、さらにそれを越えて「薮漕ぎ」に限りなく近づいた。倒木をくぐる時には自転車を斜めにし、ペダルや後輪に枝が引っかかってくるのを除け、腰より高い倒木は一度自転車を倒木の向こうに担ぎ上げて置く。この繰り返し。何よりもルートファインディングが難しい。倒木はほとんどが杉の木なのでそう問題はないが、くぐり抜ける時に大量の杉の葉やかけらが体に付着する。背負っている軽量のザックの脇にあるメッシュポケットの中には大量の杉のかけらが入り込む。時々広葉樹が倒れていて、これはくぐり抜けると抹茶のような緑の粉が大量に体に付着する。

もう引き返そうにもその気にならない。すでに秋山川の河川と同じレベルに道路はあり、ということは玉雲寺という寺を最奥とする集落も近いはずだ。林道の起点(終点)の標識もあったので、もう県道だから倒木区間が終わるだろうと思い、靴の中に入った木のかけらを取り出して先に進む。しかし今まで以上に手ごわい区間が先には待っていた。途中で気付いたのだが、倒木にはナンバーが付けられたシールが貼られている。300番近くから認識するようになったので何番から始まったのかは知らないが、道を進むにつて、倒木に貼られたシールの番号はカウントダウンされていく。200番台の時にこの番号が0になれば倒木区間は終わるのだ、と気付いて気が遠くなり、100番を割り込んだ時に元気が出た。おそらく後々倒木を除く工事をする時に必要なんだろう。

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ぐわゎ〜っ!ハードルです。一本目は自転車持ち上げるしかない。二本目以降はくぐる。

ここの林道に限らず、道路の両脇は植林された杉林というパターンは多い。しかし、今年2月に伊予ヶ岳に登った時もそうだったが、今年の関東地方の大雪の被害はかなり大きく、杉が折れて道路上に倒れ、それを退かす作業が遅れに遅れているという状況があるのではないか?この大荷場木浦沢線は下流の方から回り込んだほうが早いだろうから、地元の人でも使うことはなさそうだし、倒木の数が尋常ではないので、すべてが取り除かれ全線開通になるには相当時間がかかりそうだ。それにしても鹿沼市側に何の情報もなかったように記憶しているが、なぜだろう。

倒木区間を通過完了したのが15時15分。倒木区間の始めの方で、はさみとピンセットを発見、拾得。おそらく途中断念したXLRの人の持ち物かと思う。私は倒木区間でハンドルバーのエンドキャップを片方落とした。スポーク折れなどがなくて幸いであった。なお、倒木区間は記憶からネット上で距離を測ったら約5.5kmあった。それにしても、通過できてよかった。服装もサイクリングジャージとレーパンだけだったら痛くて無理だった。ウインドブレーカー(ヴェロキラップ)と下はタイツ&カッパ代わりにもなる透湿・防水の7分丈パンツを履いていたためにケガなく(擦り傷は多少あります)通過できた。もちろん、靴もビンディングシューズなど履いていたら終わりである。予感がしたのかもしれないが、先日スカルパのミスティックというローカットアプローチシューズを買って履いていた。ローカットなので木くずが入ってしまうが、これが役に立った。トレラン用のゲイターがあれば完璧だ。ちなみに、ペダルはミカシマのフラットペダルにハーフクリップを付けている。すぐに足を出す必要がある未舗装路&急坂対策であるが、ハーフクリップに枝が引っかかるのは閉口した。

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終わった。もう二度とこんな区間に入りたくない。
普通はこういう写真は載せませんが、走ろうと思っている人のために敢えて載せました。



しばらく走って、古代体験村・秋山学寮のベンチで休憩。水を補給。藤棚がきれいだ。
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もともと、4日晩の宿泊先が近くで確保できれば一泊して5日は筑波山北方の加波山稜線近くの林道を筑波まで走ってTX(つくばエクスプレス)で輪行して帰ってもいいかなと思っていたので、携帯で宿を探してみる。小山に空きのあるホテルはあるが、5日の天候がよくない。それに、あの倒木区間さえなければ、栃木までもう一つ県道の峠を越えて走りたかったのだが、もう時間もあまりない。今日は倒木区間でかなりのエネルギーを使った。素直に東武線で葛生から輪行で帰宅しよう。葛生駅前まで最後の快走をする。先週走った道路脇の田んぼには苗が植えられていた。

最後に駅近くのコンビニ(これも先週立ち寄った)で遅い昼飯を買って食い、17時11分の東武佐野線ワンマンカーに乗る。葛生からの乗客は2両で4人。GWとは思えない閑散とした車内だったが、佐野から多くの人が乗り込んできた。館林で久喜行きに乗り換え、久喜からは急行で曳舟へ。曳舟で下車して自転車を組み、夜8時前に帰宅できた。
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佐野線のワンマンカー。葛生駅は路線どんづまりの旅情あふれるいい駅だと思います

今回のサイクリングの総距離は、自転車を担いだ部分があるため不正確だが、メーターでは総距離約90km(自宅〜北千住、曳舟〜自宅を含む)だった。