北ア・雨から退避(3日目)

8月26日 晴れ(笠ヶ岳近くの稜線はガス)

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朝5時、昨夜とはうって変わって和風な朝食を食べた後、時差で食事が始まったUさんにご挨拶をするため、しばらく待ってみる。外へ出てみると朝焼けの山々が美しい。Uさんは双六から西鎌尾根を登って槍ヶ岳までの予定なので、ここでお別れ。

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槍ヶ岳シルエット
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鷲羽岳を振り返る
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さらば、三俣山荘
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ぱっとしない三俣蓮華岳も朝焼けで栄える
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出だしは槍穂がくっきりだったが・・

5時30分に出発し、まずは三俣峠までゆっくり登る。疲れが残っているのか、コースタイム通り。三俣蓮華岳へは登らず、巻き道ルートで双六小屋に向かうが、ここからは9年前の仕事山行中に土砂降りの中を歩いた記憶がある。黒部五郎方面から視界が全くないなか三俣蓮華にたどり着き、下降して巻き道を双六へ向かった。しかし「歩いた」という事実の記憶に過ぎず、脳内に残像はない。初めて歩くのとほぼ同じ条件で、「巻き道」の言葉が持つ安易さと現実のギャップから思うようには進まない。言葉に騙されると朝日岳の「水平道」と同じことになる。一本休憩を入れて双六小屋に7時35分。水晶山頂で会った双六スタッフが小屋前に出ていたので、挨拶する。すでに笠ヶ岳に立ち向かう気力が少しづつ萎えているが、ガスが南の谷から流れてきて、笠ヶ岳方面に濃いガスが乗っかっているのを見るとさらに減退する。双六小屋で手ぬぐいとコーヒーを注文し、8時に出発。とりあえず弓折分岐まで歩き、そこで笠ヶ岳を目指すか、鏡平方面に降っていくか最終判断することにしたが、自分の気力が上がってこないし、稜線のガスは移動しそうにない。

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双六谷からガスが上がってきた
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双六小屋の向こうの鷲羽岳、さようなら

笠ヶ岳を目指すとすれば、結構アップダウンのある道を頑張らないといけない。行く手は視界が悪い。展望があり過ぎるのも気持ちを挫くことがあるが、展望がないとどこを歩いていても同じ、別にここじゃなくてもいいことになってしまう。もう一つ、笠ヶ岳山荘ではいままで以上に水不足のはずだ。テント場で水が汲めるならいいが、小屋で買うとなると考えてしまう。自分自身に都合よく、これは雨をもたらす兆候だ、風も湿っぽいし、ガスも風で吹っ切れるレベルじゃない、と解釈した。決定。下山だ。笠ヶ岳、また来るよ。

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弓折分岐まで来たら直進ではなく、←に誘われて左へ
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本日最後の槍

9年前に下痢ピー状態でトイレに駆け込んだ記憶だけが残っている鏡平山荘に9時30分、たまたま隣に座った単独のおば様と話しながら、ついに禁断の毒水・400円缶コーラに手を出す。おば様曰く、昔は飯豊なども含めよく歩いたが、今回は鏡平に来て、周囲の自然を見ることが目的。山頂ばかりを目指さず、そういう山歩きってステキだと思う。

小池新道を降る。何だか、下山を決めたら調子が上がってきた。右手を見ると、笠ヶ岳方面は一定の標高以上が完全にガスっていて、しかも黒っぽい雲も近づいている。これは予感通り雨だ。そうに違いないと決めつけた。

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稜線上の雲は厚くなり、沢の上部も怪しくなってきた

小池新道は岩のガラガラ道に見えて、実は道普請が完璧だ。岩伝いに階段を下りる要領で歩けばよく、岩の表面がフラット。シシウドが原10時30分、秩父沢出合の水で顔を洗い、左俣林道に出る直前でも顔・首を洗ってサッパリ。わさび平小屋で12時になったので、最後の贅沢としてそうめんとリンゴを買って昼食とする。35分も休憩してしまった。あとはひたすら林道を歩いて新穂高ロープウェイのバス停に13時25分着。

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最後の贅沢にわさび平小屋名物のそうめんとリンゴ

完全ではなかったが、十分に歩いた。スマホのデータによれば、24日が12.7km、25日が25.8km、26日が28.3km。飯豊に次ぐ距離となった。よく歩いた。足の親指の腹に小さなマメができたようだ。
北アルプスの小屋で売っている手ぬぐいと軽食・飲み物にもよく手を出した。まるで高速SA・PAごとに立ち寄って飲食するかのように立ち寄って金を使った。ゲットした手ぬぐいは、烏帽子・野口五郎・水晶・双六の4種類。三俣山荘と鏡平は見つからなかったか、また他日手に入れることにする。贅沢の限りを尽くした山行だった。

新穂高13時46分発のバスを平湯で乗り継ぎ、松本に向かうが、事故渋滞があって松本BT着が1時間遅れ。大糸線に乗れたのは18時。大町に19時に着き、駅前のラーメン屋で妥協して夕食を食ったらちょうど雨が降ってきた。松本へのバスの中で雨雲レーダーの推移をみたら、14時ころ笠ヶ岳山頂に雨雲があったようで、きっと降ったに違いない。濡れずによかったし、27日により強い雨の中笠新道を降りに使っていたらエライことになっていたと思う。予感が当たって今回はラッキーだった。

一日早く降りたけれど疲れたし、雨の降りも激しいので、松川村の立ち寄り湯「すずむし荘」と道の駅をまた利用させてもらい、27日の朝に帰宅することにした。夜はずっと雨が降っていて車のルーフをたたく音がうるさかった。夜、槍ヶ岳に向かうはずだったUさんも雨の予報を知って新穂高温泉へ下山されたことをメールで知った。また、27日朝には飯豊でご一緒したIさん母娘と安曇野市内で再会することができ、楽しい一時を過ごすことができた。

今年の夏の登山はこれで終了。縦走中に「秋はどこに登るんだ?」と散々聞かれたが、秋は皆が集中するから登山するとしてもメジャー所は行かない。むしろ自転車の季節だ。そして冬が来ればスキーの季節。へそ曲がりは裏の季節になると無性にスキーがしたくなる。