12月に読んだ本

年末は忙しかったうえ、緻密な内容の本を読んだので冊数は3冊だけ。

・瀧井 一博 著 「伊藤博文 知の政治家」(中公新書)

サントリー文芸賞を受賞した作品なので前から気になっていた本だが自分で買ってみた。内容はかなり緻密で、内容の薄い新書とは違って読み進めるのにかなり時間がかかった。
伊藤博文のイメージというのは一面的ではなく、一言では言い表しにくい。この本では「漸進主義」というキーワードで伊藤が辿った政治家としての道を追っていく。特に初代内閣総理大臣となった伊藤は自由民権運動から発する政党を当初認めようとしなかったのに対し、日本史の教科書でも書かれるように立憲政友会という政党を組織することになるのはなぜなのか、またなぜ「政友会」なのかが読み進めるうちにわかってくる。晩年の朝鮮支配に対してどのように臨んでいたのかも描かれている。ドラマ「坂の上の雲」では加藤剛が演じていて、ドラマの中では日露開戦を最後まで拒絶する平和志向の政治家、という一面性しか描かれないが、本当の伊藤はもっと深く、多面的である。

・セルジュ・ミッシェル ミッシェル・ブーレ 著、中平 信也 訳 「アフリカを食い荒らす中国」(河出書房新社)


中国のアフリカへの経済進出については知られてはいるが、その実態はなかなかリアルに伝わらない。でも南部地域の分裂が話題になっているスーダンのような国にも、中国人は数万人規模で進出している。在アフリカ華僑の集団は想像以上に大きく、アフリカ経済に食い込んでいる。その功罪について書かれた本だが、いろいろと考えさせられた。

・佐藤 優 著 「甦る怪物(リヴィアタン) 私のマルクス・ロシア編」(文藝春秋)

11月に文庫化された「私のマルクス」の続編を単行本で買って読んでみた。これもまた面白い。もちろん、佐藤が外交官となり、ロシアで活動していた時代(ペレストロイカ期〜ロシア連邦初期)を扱った内容である。
せっかく単行本で買ったので、弊社図書館に寄贈しようかと思っていたら、図書館には「私のマルクス」は入っていないのになぜかこの本だけは入っていてガッカリ。