4月に読んだ本


・山口 直彦著「アラブ経済史―1810~2009年― (世界歴史叢書)」(明石書店)

19世紀以降のアラブ経済史。特に19世紀の従属化と近年のドバイに代表される躍進については読んだが、あとは斜め読み。

・向 一陽著「ヒマラヤ世界 五千年の文明と壊れゆく自然(中公新書)

ヒマラヤに関する地理・歴史書かと思って借りて読んだが、ほとんどがエッセイであった。あまり残らなかった。

・中村 安希著「インパラの朝 ユーラシア・アフリカ大陸684日(集英社)

2年近くにわたる女性バックパック一人旅のルポ。初め途上国に対する先進国からの人的援助を肯定していた著者が、アジアやアフリカの貧困の中にある種の「幸福」を読み取って次第に慈善・偽善的援助から距離を置いていくところが面白かった。最近の若い女性バックパッカーには、国境を越えるために偽装結婚して国境を越えてから離婚するという手段を選ばない旅をする人がいるとどこかで読んだ気がしたが、この著者も2度結婚と離婚をしている。カバーには著者の写真もあり、なかなかの美人である。下司の勘ぐりだが、紙の上だけの結婚で済んだのだろうか?

・荒 このみ著「マルコムX」(岩波新書)

マルコムXについてちゃんと評伝を読んだのは初めてである。Xが何を意味するのか、またなぜイスラームに傾倒したのかも少しわかったような気がする。

岩波新書編集部編「日本の近現代史をどう見るか」(岩波新書)

シリーズ全巻が発刊され、最近ではまとめ買いができるようになっている近現代史シリーズのまとめである。シリーズの本は確か2冊くらいしか読んでいないが、この本はそれぞれの著者が何を描きたかったのかが語られている。すべて敬体で書かれていて本シリーズの著作より読みやすい。特に加藤陽子の文章に書かれていた、アメリカ中立法や武器貸与法の動きをにらみながら日本が動いていたという内容は注目に値した。

・芹沢 一也ほか「日本を変える『知』(シノドス・リーディング)」(光文社)

以前、シノドス・リーディングの2巻目、「経済成長って何で必要なんだろう」を読んだが、その第1巻目と第3巻目がまだ弊社図書館に入っていなかったので、推薦して入れてもらった。若手研究者の分かりやすい切り口での文章が並んでいる。セミナーでの講演を文章化したものだ。もっと知られていい本だと思う。