2019年10・11月に読んだ本から

・トニー・コリンズ著 北代美和子訳「ラグビーの世界史 楕円球をめぐる二百年 」(白水社)

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いやー、圧巻のラグビー史だった。500ページにもわたるハードカバー。ワールドカップ中からその後までずっと楽しめた。15人制のラグビーユニオンと13人制のラグビーリーグ。日本では13人制はほとんど省みられないが、外国ではかなりの人気があるらしい。一度見てみたいものだ。

・ロバート・ロス著 石鎚優訳「南アフリカの歴史 ケンブリッジ版世界各国史」(創土社)
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ラグビーワールドカップでの南アフリカの優勝を祝して。ヨーロッパからの移住者であるオランダ系のボーア人(アフリカーナー)と後からやってきたイギリス系の人々の差というのは何なのか、調べてみたかった。結局、ボーア人はオランダ系だけでなくフランス系のユグノーやルター派のドイツ系も含む人々で、大農場経営のために黒人奴隷使用を容認していた。19世紀から新たにやってきたイギリス系は奴隷制度を否定しており、両者は対立していた。イギリス系が貴金属を狙ってボーア戦争に勝利すると、両者はアパルトヘイト政策を進めていく。ボーア人の方が数の上では圧倒していたためにこの政策は80年代まで維持されていた。

・加藤 直樹著 「トリック 朝鮮人虐殺をなかったことにしたい人たち」(ころから)
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本の帯タイトルが映画のタイトルと同じようにRが裏返っているので紛らわしいが、渾身の反論書である。「ころから」で著者は関東大震災に関する本をすでに出しているが、最近大手を振って独り歩きし始めた「朝鮮人虐殺はなかった」という根拠のない暴論をエビデンス付きで丁寧に論破している。さすがにここまできっちりと論破されると、偽書に惑わされた人々からの反論(それでも朝鮮人虐殺はなかったといった類いの)は起こりにくいだろうと思っていたが、それでもAmazonの書票などにはこの本を評価しない書評が若干見られる。

・鈴木 透著 「食の実験場アメリカ ファーストフード帝国のゆくえ」(中公新書)
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アメリカには食文化などないのではないか、みなハンバーガーやピザを電子レンジで温めたら終了といった食事をしているのではないか、などと短絡的に考えがちだが、どっこいアメリカにもさまざまな地域から食文化を背負って移民した人々がたくさんいる。スペインやフランスやドイツなどからもたらされた独特の料理がアメリカには根付いている。

・ヤマザキマリ とり・みき著 「プリニウス Ⅸ」(バンチコミックス 新潮社)
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ネロが登場。プリニウス一行の漫遊はネロによって自由さを失った。ネロはキリスト教徒からは後年暴君として描かれるが、実はうぬぼれの強い皇帝にすぎず(ネロのジャイアンリサイタルについて触れられている)、キリスト教徒を目の敵にして迫害したとはいえない。

・幸村 誠 著「ヴィンランド・サガ23」(アフタヌーンKC 講談社)
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アニメ化されているが、原作の漫画の方はちょっと失速気味か?もう少し紆余曲折があってもよいように思うのだが・・これからだろうか?