上信越エリア屈曲路祭り

「不要不急の外出」として、3日間のツーリングに行ってきた。
決行するにあたってはだいぶ逡巡した。普段、単独の日帰りツーリングではコンビニでしか人と向き合うことはなく、まず会話もない。ガソリンスタンドも極力セルフ式を選んでいるので人との会話はない。
今回は宿泊先の人と最小限の会話が必要になるが、濃厚接触には至らない。おそらく濃厚接触者は同行してくれる吐月工房氏のみだと思われる。ともに2回のワクチン接種を済ませて2週間以上経過している。
W800を手に入れてから、夏の間にどこかへ泊まりがけでツーリングに行こうというつもりには二人ともなっていた。雨天が多かった8月だが、ここへ来て平日3日間が晴れる予報になった!標高の高いところへ短時間でも涼しい思いをしに行きたい。
リスクを承知で行くなら今行かずしていつ行くのか?「不要不急」を判断できるのは本人だけだと五輪担当大臣は言っていたからな・・

宿泊先は1泊目が志賀高原のスキーの定宿、2泊目は渋川市のビジネスホテル。
メインは涼しさを求めて標高の高い草津から志賀高原のワインディングと荒涼とした毛無峠、志賀高原から秋山郷への細い屈曲路、津南町から頸城丘陵を縫うようにして走る強烈な屈曲路のみの3ケタ国道と雪深い農村地帯、そして魚沼スカイラインである。全走行距離は700km強。

26日、吐月工房氏と上信電鉄山名駅で落ち合う。10時集合の約束をして、首都高・東北道・圏央道・関越道とすべて高速で行けば早く到着できたものを、高速に飽きて東松山ICで下に降り、国道254に乗ってしまったのが失敗だった。この国道には頻繁に信号があり、ゴーストップの繰り返しで時間を浪費する。結局10分以上遅れて到着。小さな木造駅舎前をバイクツーリングの待ち合わせに使う人は多分いないが、道の駅のような人が集まるところで合流するよりは好きだ。自販機もあれば、トイレもあり、待合室もある。
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上信鉄道山名駅

その後県道を走り繋ぎ、鼻高橋で碓氷川を渡って国道18号に乗り、すぐに県道137号に移って榛名山麓を走り、最終的には県道126号で榛名湖まで。ここまででも十分に屈曲路を走れる。平日の榛名湖(標高1100mほど)は涼しいが人は少なめで、西岸の無料駐車場で短い休憩。県道28号線で吾妻線郷原駅近くまで下って、国道145は走らず吾妻川対岸の県道を走る。途中で長い吾妻峡トンネルがあり、中はひんやり涼しいのだが路面が濡れていて滑りそう。しかも雨は降ってないのに路面からタイヤがすくい上げる飛沫でフェンダーなど下回りが真っ白になった。雨の中を一度も走っていないので、初めてツーリングで汚すことになり、多少ガッカリ。ツーリングの泥はねは勲章なのはわかるけど・・

長野原でドラッグストアに立ち寄り、コンビニで昼食を買い求めて屋外で食べ、道の反対側のGSでガソリン補給。ガソリンは162円/Lと高かった。少し先の草津町のT字路近くにあるGSが渋峠を越えて志賀高原に向かう国道の最終GSである。今回の計画ルートだと志賀高原から秋山郷を抜けて津南町までGSはないと思われる。津南から先に進むとおそらく松代(まつだい)までGSはないはず。GSは適切なタイミングで寄らないと山岳県境近辺では貴重だ。
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今回の装備

午後、草津から国道299で草津白根山を登り始める。まもなく目の前にはダンプ1台のみとなったが、センターラインはイエローだし、ブラインドカーブが多くて危険だから抜けない。ダンプは中腹の工事現場までだろうと思ってペースを合わせてゆっくりと走り、涼しさと景観を楽しみながら上がっていったら、ダンプの行き先は万座温泉だった。国道から自分たちが行こうとする万座方面にダンプが曲がった時に絶望した。
曲がってすぐ路肩に寄せて、ダンプとの距離を置いてゆっくり追いつかないように屈曲路を下り始めた。しかし途中で追いついてしまう。仕方なく万座温泉までダンプの後ろに付いた。

それにしても、数年前に草津白根山が噴火して、3年ほど前に志賀高原から草津へ降りた時は通るには通れたが規制が強かった。今年は規制らしい規制が見られない。草津白根山の警戒レベルが下がったため、4月の開通時に通行の時間規制や車種規制も無くなったらしい。したがってバイクや自転車でも通行可能になった。ただし、白根山手前のレストハウスや駐車場は閉鎖中だった。

万座を通過して、毛無峠に向かう。長野県境に沿って須坂方面への県道466を走るが、もうカーブミラーは完備されていないし、路肩から草や枝が張り出している。道幅も細く、舗装林道と同レベルである。須坂市に入ってすぐ左折して県道112号を走り、舗装が途切れた少し先の県境まで。上昇気流の冷却によってガスが発生しやすい毛無峠は珍しく晴れていた。
毛無峠に始めて来たのは30年以上前。オフロードバイクで須坂から湯沢林道(現在でも未舗装)を登ってきてたどり着いた。その後も1〜2回ほど来ただろうか?群馬県側に小串硫黄鉱山がかつてあり、硫黄を運ぶための索道の錆びた鉄柱だけが須坂方面に点在している。小串鉱山跡には集落もあったようで、何かで読んだか見たりしたことがあるが、ゲートがあって容易には群馬県側には入れない(ウェブ上にもさまざまな記録がある)。峠に大きな木はなく、上昇気流を利用して、今はラジコングライダー愛好者の聖地になっているようだ。かつてだったら考えられないほどの車が峠に停車してあった。また、御飯岳、破風岳、土鍋山の登山者もいた。いつか車で来て歩いて登ろうと思っていた場所ではあるのだが、地形図を見ると御飯岳からトレイルが南に延びて、パルコール嬬恋のゲレンデトップにある裏倉山、四阿山、菅平の東の根子岳まで登山道があるらしい。
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毛無峠

しばし休憩して、午後3時ころ万座方面へ戻る。志賀草津道路に戻って、平日で混んではいないので「国道日本最高所」の路側駐車場に立ち寄り、その後渋峠スキー場ボトムの渋峠ホテル前、横手山ドライブイン前を通過して下りにかかる。屈曲路の連続で陽坂まで下り、左手の熊の湯スキー場、右手の前山サマーリフトを見て平床の噴泉、猫の額のような木戸池キャンプ場、田の原湿原、三角池などを見ながら下っていく。蓮池で今日のツーリング終了。コロナの影響で空いてはいるが、個人客のみ受け入れているホテルのホスピタリティはいつものように満点だった。
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草津白根山方面
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芳ヶ平方面(春先は道路からスキーでドロップできる)
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日本国道最高地点

27日、9時に宿を出発。奥志賀方面に向かうが、長袖のジャージを化繊Tシャツの上、メッシュジャケットの下に着てきたのに、ジャイアントスキー場をくぐるトンネルでもう寒い。清水名水公園で水を汲み、道中の飲み物とする。いつもながら美味しい水。
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W800のタンクを上から撮影してみた

オフシーズンのため、高天ケ原も一ノ瀬もホテルが閑散としている。焼額はプリンスホテル自体が閉まっている。スキーシーズンにならないと採算が取れず、開けないのだろう。奥志賀高原から道幅が狭くなる。かつての「奥志賀スーパー林道」である。30年以上前のオフロードバイクツーリングでは、少し先から未舗装だったはず。カヤの平へも、秋山郷の切明温泉へも、未舗装の砂利道を走らないとたどり着けなかった。もうこの道は全舗装、県道502号、別名「北信州もみじわかばライン」である。ただ交通量は非常に少ない。

走っていると、ローラースキーでクロスカントリーのサマートレーニングをやっている集団に出くわす。かなり若く、10代とおぼしき少年少女が多いので、ひょっとしたら飯山あたりの高校でクロカンが強く、鍋倉山へ部員たちがホイホイと登って行く(かつてプライベートでスキー登山に行ったら出くわした)高校かも知れない。彼らとすれちがってから、カヤの平まで足を伸ばしてみた。以前来た時も思ったが、静かでいいキャンプ場だ。何日間かここでのんびりキャンプ生活してみたい。カヤの平でもローラースキーヤーが2名いて、帰路ものすごいスピードでバイクの前をスケーティング滑走してくれた。たぶん時速40kmは出ていたはずだ。彼らの肩から二の腕にかけての筋肉の美しさはすばらしい。ひょっとしたら日本でもトップのクロスカントリースキーヤーなのかもしれない。同じスキーヤーたるもの、ここまではいかなくても、夏でもスキーのことを考えてインラインスケートなどでトレーニングすべきだが、傾いて曲がるところしかバイクとスキーは共通点がないし、エンジンの力で前進しているていたらくだ。
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カヤの平キャンプ場

雑魚川林道へ。かつてのハードな砂利道もきれいな舗装路に変身した。しかし高度感はかなりある。よく昔長い砂利道を通り抜けたものだ。屈曲路につぐ屈曲路を経て、秋山郷の最奥にある切明温泉に至る。途中、正面の大岩山と左手の鳥甲山の大岩壁が圧倒的。ここからは国道405号(中之条町〜上越市。切明温泉〜野反湖は未完成)だが、国道とは名ばかりで狭くて急カーブ、急坂が連続する道が津南町近くまで続く。前倉橋のあたりが特に凄い。秋山郷には集落はところどころにしかない。津南町に入って渓谷が広くなってようやく道路幅も広くなってくる。そのまま国道117を横断して津南駅で休憩。11時である。駅のトイレに立ち寄って、再び国道405号をキューピットバレイスキー場方面へ。津南駅裏の踏切を渡ってからの国道405号は車一台分の道幅しかなく、屈曲路の連続(七曲り)で頸城の丘陵地帯を越えていく。小さな集落が出てきて田んぼが道路脇にあるとホッとするが、田んぼが作れるほどの集落を過ぎるとすぐに上り基調となって集落から離れる。次の集落まではまた心細く狭い屈曲路となる。松之山天水島、松之山スキー場、松之山天水越あたりまではまだ集落が大きめだが、大厳寺高原から来る道を分けると三方峠の道になる。昔も今も、大厳寺高原と国道405の分岐には迷う。国道の標識もなければ道幅は共に狭い。

十日町市浦田地区の渋海川に沿った小さな集落の2棟は茅葺きで、生活している人がいる。周りには手入れされたきれいな田んぼと小さな神社があり、特に印象に残った。写真は撮らずじまいだった。その後すぐに渋海川を渡って方向転換し、峠道となる。そんなことの繰り返しで、国道405号を走っていると方向感覚がおかしくなり、どこにいるのかも把握できなくなる。ようやくキューピットバレイスキー場の方から下ってくる国道403号(新潟市〜松本市)と合流して「雪だるま物産館」に12時過ぎに着いた。ちょっとした道の駅のような施設。ちょうどその一角にある蕎麦屋が営業していたので、雪むろで蕎麦粉を貯蔵した雪むろ田舎そば(1,330円)を堪能した。

午後は少しこの国道を北に下り、高田方面に向かう405号を見送って、403号で松代(まつだい)方面に向かう。大合併した上越市の地籍だが、道路幅は405号よりも太くなったが、屈曲路は凄い。見どころは星峠の棚田。棚田はもちろん405号沿いにもたくさんあった。しかし星峠の棚田は谷が開けていて非常にスケールが大きく、見栄えがする。心無い見学者が絶えないようだが、真夏の平日午後では見学に来る人も少なく、暑いので写真を撮ったらすぐに離れてしまう。我々はじっくりと眺めて休憩を兼ねた。
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星峠の棚田

ここからは比較的快走できるルートになる。松代を過ぎて延々と長いトンネルを何本も越えて十日町市街に至り、ここで給油。W800は10L補給して、草津から300kmほど。30km/Lを達成。信号がなければかなり燃費は伸びる。

十日町から魚沼丘陵を越えるが、魚沼スカイラインを走りたく、旧国道253号の八箇トンネルを抜けた八箇峠入口で魚沼スカイラインの部分的通行止めを確認。八箇峠入口から魚沼スカイラインを全線通過することはできない。ムイカリゾートスキー場のボトムを通過し、シャトー塩沢スキー場の近くをかすめ、栃窪峠で魚沼スカイラインに乗る。展望台で魚沼地域全景を眺めて、南に走り、十二峠から石打へ。渋川到着は19時ころになりそうだ。

ここからは国道17号で新潟・群馬県境を越える。一般道ではこの1本しかない。スキーで通り慣れたルートをバイクで走っていくと、かぐらあたりのトンネル内は大変涼しい。三国トンネルは新トンネルがほぼ完成したようだ。三国峠の屈曲路を下り、湯宿温泉近くの道の駅「たくみの里」で休憩。ここの道の駅は空いていてよろしい。その後は国道に戻らず、県道36号線でダイレクトに渋川に向かう。渋川市街の道で再び激混みの国道17号に戻って予約したビジネスホテルにたどり着く直前、黒い雨雲が垂れ込めてきた。到着時はかろうじて晴れていたが、チェックインしたのちに雨が降ったようだ。バイクは屋根の下に停めさせてもらうことができた。
この日は疲れて早々に寝た。

27日、ほぼ各自で南下して自宅を目指す。もう9時の関東平野はかなり暑い。
私は、利根川を越えるまでは国道17号上武バイパスを使い、埼玉県道45号、59号、60号を使って栗橋で国道4号に出て、久喜から再び県道で南東の五霞、幸手を通過して新4号バイパスに乗り換え、道の駅庄和から県道42号、野田橋西詰、江戸川沿いの信号の無いルートを南下した。三郷あたりでフューエルランプが点灯して、GSの無い江戸川沿いの道を南下した。実際は余裕で、10L近く消費すると残りが5L程だが、点滅はしてしまう仕様らしい。渋滞がなければ残り5Lで100km以上は走れる計算だ。
松戸と葛飾区の境で金町から環七方面に向かったが国道6号線の左側にはGSはなく、環七沿いのセルフで給油。275kmで10Lちょうど。無事午後1時に駐輪場に到着。バイクの洗車はとりあえず明日だ。まずは汗と排気ガスで汚れた衣類を洗濯する。

久しぶりに大きなツーリングになった。暑さは辛かったが、ほとんど屈曲路の連続で、全走行距離は700km以上となり、充実したものになった。何となく、冬はスキー場が点在するエリアで道路が冬季閉鎖されるところをたどった感がある。
秋にもできれば遠くへ行きたいものだ。