2022年3〜4月に読んだ本

・小川 幸司・成田龍一 編「世界史の考え方 シリーズ歴史総合を学ぶ①」(岩波新書)
book2022.18
2022年度から高校地歴科に「歴史総合」という新科目が誕生する。鳴り物入りでの登場だが、この科目に私はかなり懐疑的である。「歴史総合」に名を借りた本がいくつか出始めているが、この本もその1つで、シリーズ化されている(②以降は5月末時点で未刊)。世界史教員から長野県の公立高校の校長になった小川と、日本史研究者の成田が独特な課題図書を各章に設定して読み込むとともに歴史学者を各章ごとに招き、ともに課題図書をめぐって論じる、という構成になっているが、課題図書として取り上げた本が最初から古めかしすぎて(いきなり21世紀に大塚久雄!)、力が入っている割に空振りしている。現実の教室での新科目の授業を想定した本とは到底言えない。歴史を専門にしようと思う大学生が読むのならわかるが、日々現場に立ち授業を行う教員に向けての本とは到底思えない。歴史総合の授業を担当することになってこの本を読むと、多分絶望する。特に日本史を専攻してきた教員には相当ハードルが高いはずだ。これは②以降で是正されるならよいが、あまり期待できそうもない。
そもそも「歴史総合」の設定には、大学の歴史研究者の夢想が大きく絡み、そこへ「アクティブラーニング」などの不可解な掛け声が強調され、高校での授業の実態が十分に踏まえられることなく導入されてしまった。日本史と世界史を融合する、というのは簡単なようでいて初学者相手では相当難しい。高校3年生で歴史総合が設定されるならまだしも、世界史を学んだことのない高校1年生に設定されるのは無理がある。


・柿沼 陽平 著「古代中国の24時間 秦漢時代の衣食住から性愛まで」(中公新書)
book2022.08
タイトルそのものの切り口で古代中国史を扱った本。これはとてもユニークな切り口で斬新だった。

・阿部 拓児 著「アケメネス朝ペルシア 史上初の世界帝国」(中公新書)
book2022.10
以前読んだ青木健「ペルシア帝国」とは対照的で、オーソドックスな世界史教科書の理解があれば読み進めやすい用語を用いている。

・玉木 俊明著「近代ヨーロッパの形成 商人と国家の近代世界システム」(創元世界史ライブラリー)
book2022.19
創元社世界史ライブラリーは電子化されていて気軽に専門的な知識に触れることができる。長年読みたい本のリストに入れていたが、ようやく割引クーポンを使って購入することができた。世界システム論や「大分岐」論を下敷きにしてオランダやイギリスの近代を理解することができた。

・小梅 けいと 著「戦争は女の顔をしていない3」(KADOKAWA)
・魚 豊 著「チ。地球の運動について 第7集」

book2022.17book2022.16
スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチの両親はベラルーシとウクライナ出身だそうだが、スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチの作品を生み出したロシアでこのような非人道的な行われるのはどうしてなのだろうか?人間は凄惨な戦争をすぐに忘れてしまうほど愚かなのか。