2020年8〜10月半ばまでに読んだ本

・白井 聡 著「武器としての『資本論』」(東洋経済新報社)
41URI4pLFGL._SX344_BO1,204,203,200_
電子書籍で購入。資本論をわかりやすく紹介している。読みやすく、難解な資本論の内容が具体的によくわかる。Amazonでの評価は低いものがあるようだが、それらはまったく的を射ていない。

・壇上 寛 著「陸海の交錯 明朝の興亡 シリーズ中国の歴史④」(岩波新書)
・岡本 隆司 著「『中国』の形成 現代への展望 シリーズ中国の歴史⑤」(岩波新書)

31+G8vJ4AEL._SX307_BO1,204,203,200_31a9J6aDz2L._SX308_BO1,204,203,200_
中国史シリーズの最後を飾る2冊。明と清で1冊ずつ、というのはかなり珍しく,画期的とも言えるが,明だけで1冊を構成するには少し無理があるように感じた。

・庭田 杏珠・渡邉 英徳 著「AIとカラー化した写真でよみがえる戦前・戦争」(光文社新書)
・春日 太一 著「日本の戦争映画」(文春新書)

51ctA2nIrCL._SX306_BO1,204,203,200_41i4pC5VBmL._SX308_BO1,204,203,200_
戦争物2冊。前者は現役東大生が高校生の頃から実践してきたカラー化作業の集大成。カラー化されるとそれだけでリアルになる。後者は戦争映画についての蘊蓄だが、残念ながら実際に見た映画が少ない。

・金澤 周作 監修「論点・西洋史学」(ミネルヴァ書房)
51oY04iJ0XL._SX350_BO1,204,203,200_
紙の書籍をネット販売で購入。西洋史学における論点を見開きで解説した本で,執筆者多数。事典的に必要な時に読むのがよい。

・佐藤 大介 著「13億人のトイレ 下から見た経済大国インド」(角川新書)
51DAkjQj3gL
電子書籍で購入。インドのトイレ問題は表層的な問題ではなく,女性保護の問題、衛生問題、カースト問題、政治問題などを含んでいる。モディ政権下でトイレの大々的な設置が叫ばれているが,この国でも忖度が横行して数字の操作が行われているらしい。ソ連のチェルノブイリ原発事故と同じことが繰り返されている。それは日本も全く同じだ。

・高橋 大輔 著「劒岳 線の記 平安時代の初登頂ミステリーに挑む」(朝日新聞出版)
51Mai087AXL
電子書籍で購入。山岳小説でもあり映画にもなった新田次郎の「劒岳 点の記」の末尾にあった、測量隊の初登頂時に山頂部に錫杖と鉄剣を発見したことから,本当の初登頂者は誰なのかを探る本。ルートは早月尾根から登ったのだろうということはうすうす感じていたが,途中まで沢を登ったことを推測したのはなかなか圧巻だった。しかし初登頂者を特定する過程の記述はいまひとつに感じた。

・吉見 俊哉 著「東京裏返し 社会学的街歩きガイド」(集英社新書)
51dB8XGU6qL._SX304_BO1,204,203,200_
電子書籍で購入。帯にあるように、都心北部を重点的に歩きながら都電荒川線を延伸してトラム環状線を造りたいという願望を乗せた本。7日間の散歩は実際にやってみたくなった。

・神代 健彦 著「『生存競争』教育への反抗」(集英社新書)
51FRKBk7GXL._SX304_BO1,204,203,200_
ウェブサイト「シノドス」を眺めているうちに著者の文章を読んで買い求めたくなった。電子書籍で購入。非常に真っ当な主張を論理的に展開している。今どきの教育は何でも学校に背負わせ(道徳教育やコンピュータリテラシーなど)、その結果カオス化している。教員の労働量は尋常ではない。部活動の指導などもしなくてはならないのに、それはボランティアとして位置づけられている。何でも学校に背負わせ,学校からリターンを得ようとする親や政治家の無茶ぶりにはあきれ返るばかり。これから将来が不透明だから子供にあらゆることを学校で身に付けさせようというのは本当に間違っている。将来が不透明なのはいつの時代も同じ。戦前・戦中の無茶苦茶な学校教育であっても、真っ当な人材は育ってきたし,未来を切り開いてきたではないか。

・小池 和子 著「カエサル」(岩波新書)
31R+JEPf5RL._SX308_BO1,204,203,200_
今なぜカエサルなのか,ちょっと首をかしげたくなった。

・上田 信 著「人口の中国史 先史時代から19世紀まで」(岩波新書)
31bnUNIPx4L._SX307_BO1,204,203,200_
サブタイトルの内容を緻密に追うのは困難であり、18世紀以降の人口爆発がメインテーマ。資料と合理的な推定によって人口の急増を分析している。

・ヤマザキマリ とり・みき 著「プリニウス10」(バンチコミックス 新潮社)
51kVwu1uv2L._SX349_BO1,204,203,200_
ついにネロが死んだ。新聞書評にもこのコミックが紹介されていた。

・野田 サトル 著「ゴールデンカムイ 1〜23」(ヤングジャンプコミックス 集英社)
・中川 裕 著「アイヌ文化で読み解く『ゴールデンカムイ』」(集英社)

519p30Cw+8L._SX349_BO1,204,203,200_51VhXUPqYcL._SX304_BO1,204,203,200_
以前から気になっていた漫画でアニメ化もされた。8月にとあるチャンネルでアニメの第1期、第2期を一気に見た。その途中から原作を読みたくなり,電子書籍で全巻大人買い。血なまぐさく、シリアスに見えてグルメ漫画でもあり、ギャグ漫画でもあるところが現代的だが、実に面白い。北海道のアイヌがきっちり描き込まれ、アイヌ語の一端も知ることができる。主人公たちが小樽近郊から網走を経て樺太(サハリン)に渡ると、サハリンにいたニブヒやウィルタなども描かれるし、主人公の少女アシリパ(右の本の表紙)がポーランド系の流刑者の血を引くというところもリアルでよい。
漫画の作者にアイヌ文化のアドバイスをしているのが千葉大学の中川裕さんだが、アイヌ文化についての解説本が後者である。
現在、アニメの第3期、樺太編が始まったばかりである。