2017年3月に読んだ本から

・横山 宏章 「孫文と陳独秀」(平凡社新書)
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孫文は有名だが、どうも辛亥革命の立役者として評価され過ぎているきらいがある。陳独秀は中国共産党創始者の一人で、高校世界史の教科書にも掲載されているが、名前以外にその功績が知られていない人物だと思う。この二人を交錯させながら第一次国共合作までを描いている。陳独秀という人物について深く知ることができたのは収穫だった。

・国谷 裕子 著「キャスターという仕事」(岩波文庫)
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話題の本でもある。弊社図書館では岩波文庫はすべて購入しているので、まだかまだかと待っていて、誰よりも先んじて借りることができた。国谷さんは幼少期に米国と日本と香港の学校を次々に転校していて、日本語よりも英語の方が堪能で、大学も米国の大学を出ている。彼女のコンプレックスはきちんとした日本語が扱えない、ということだったそうだ。テレビで報道の仕事を始めてからも失敗の連続でずいぶん落ち込んだという。23年間続いた「クローズアップ現代」の仕事ぶりからは想像もできない過去だ。そして、一番すばらしいと思ったのが、日本語が不得手だったという国谷さんのこの本の中には、とても美しい日本語がつづられていることだ。国谷さんがしばらく充電して再び報道やインタビューで活躍されることを願っている。

・勢古 浩爾 著「ウソつきの国」(ミシマ社)
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勢古浩爾の本はだいぶ前にまとめて読んだことがある。非常にまっとうな感覚の持ち主で、彼の書いた文章を読むことで虚勢を張らなくても生きていかれるようになったと思っている。久しぶりに彼の本を買って読んでみたのだが、予想に違わず、最近ちょっとおかしいぞと思いながらも公言はできなかったり、言葉で表現することが自分ではできなかったことがつぎつぎにあばかれていくのを読むのは爽快だった。やはりミシマ社はまっとうな本を出す出版社だ。