2022年9〜10月に読んだ本

歴史関係
・本郷 和人 著「歴史学者という病」(講談社現代新書)
book2022.51
現役の東京大学史料編纂所の教授が歴史学者になるまで、歴史学者になってからの歩みを赤裸々に書いた本。非常に読みやすく、歴史学を専攻するということはどういうことなのか、歴史学を取り巻く状況がよくわかる。東京大学の教授も昔に比べると大きく変化したなあと思う。

・工藤 晶人 著「両岸の旅人 イスマイル・ユルバンと地中海の近代」(東京大学出版会 シリーズ・グローバルヒストリー3 )
book2022.57
こちらは学習院大学教授でアルジェリア史を専攻してきた著者の本。サントリー学芸賞を受賞した2,013年の先行本は高くてまだ手を出していない。実は30年前の著者と私は関係があったりするのだが、そういう私的関係を除いても、この本の内容は非常にユニークで面白い。ギニア生まれで黒人の血も混じるユルバンがフランス人植民地官僚としてアルジェリアの宗教や文化に触れながら現地を統治していくという、大西洋と地中海の両岸を跨ぐ人物を描いている。アルジェリアのイスラーム社会との関係においては、対比として日本の幕末にあらわれたロシュ(ロッシュ)も描かれるが、こちらはかなりいかがわしい。グローバルヒストリーと銘打つシリーズ本の1冊としてふさわしい。この本だけは紙の本で読んだ。

・望月 雅士 著「枢密院」(講談社現代新書)
book2022.46
戦前の日本に存在した枢密院。その役割について時代を追って述べた本。あまり抑揚がなく、淡々としていて飽きてきてしまった。


社会に関する本
・窪田 新之助 著「農協の闇」(講談社現代新書)

book2022.53
農協(JA)の共済事業などの営業がかなり怪しく、営業マンの犠牲をベースに成り立っているという暴露本だが、いつまでたっても救いがなく、JAの不正暴露ばかりが延々と続くので、食傷気味になり途中で挫折した。

・八木澤 高明 著「裏横浜 グレーな世界とその痕跡」(ちくま新書)
book2022.48
やたらと講談社現代新書の電子版ばかり読んできたことに気づかされたが、他の出版社の本も読んではいた。個人的には黄金町などの風俗街を描いてくれたのが嬉しかった。黒沢明監督映画「天国と地獄」は大好きな映画だが、犯人が麻薬を買い求め、実験的に黄金町の麻薬中毒患者に注射して死に至らしめるシーンがあるが、日本ではそんな街は存在せず、黒沢特有の外国を意識したオーバーな脚本の産物だと思っていた。でも、この本によればそこまで劇的ではないにしろ、それに類する街が存在したことに驚いた。

・坪和 寛久 著「今日ヤバイ屋台に行ってきた インドでメシ食って人生大逆転した男の物語」(KADOKAWA)
book2022.55
YouTubeでこの人の動画を見た。インドの屋台で作られる料理の作成過程を至近距離から撮っただけの動画だが、インサートされるテロップ(擬音が多い)が独特で、やみつきになる。毎日数本見てしまうという日が数日続いた。ユーチューバーが書いた本を読んでみようと思って電子版で購入したが、単なる画像の電子書籍で拡大しないと読めないのが残念。期せずして自分の好きなものを撮影してYouTubeにアップしていたらチャンネル登録者が70万人にも達してしまったという意図せずして収入を得てしまったユーチューバーということになる。やはり動画の方が面白い。

その他興味のおもむくままに
・牟田 都子 著「文にあたる」(亜紀書房)

book2022.56
現役の校正者によるエッセイ。読みやすく、校正が大変な仕事であることがよくわかる。

・羽根田 治 著「山はおそろしい 必ず生きて帰る!事故から学ぶ山岳遭難」(幻冬舎書房)
book2022.54
山岳遭難レポートといえば羽根田氏の本。本と本の間に口直し的に読めるし、あっという間だ。
本当に山はおそろしい。でも自分は行くのを止めることはできない。

マンガ
・ヤマザキマリ 著「オリンピア・キュクロス 7」(ヤングジャンプコミックス)

book2022.52
かなり途中とっちらかったこのマンガも、ついに最終巻。最後に「テルマエ・ロマエ」のルシウスが登場してきて驚いた。

・柘植 文 著「喫茶アネモネ 2」(東京新聞)
book2022.58
東京新聞で毎週連載されている読みきりマンガ。アネモネの老マスター、ウエイトレスのよっちゃん、毎日集う常連たちが相変わらずいい味を出している。