2021年9〜11月に読んだ本


・斎藤 幸平 著「人新世の『資本論』」(集英社新書)
・斎藤 幸平 著「100分de名著 カール・マルクス『資本論』」(NHK出版)

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斎藤幸平さんは若くして活動的な哲学者・経済思想史研究家で、大阪市立大学の准教授である。「人新世の資本論」は2021年の新書大賞を受賞しており、マルクスの晩年の思想研究を利用して現代資本主義の行き詰まり現象と近い将来に関わる地球的問題を解決する一つの考えを展開している。読んで、非常にわかりやすかった。
少し以前に100分de名著の講師としてテレビ出演したことも知り、そのテキストも買って読んでみた。
番組のテキスト本以上の本であった。

・猪木 武徳 著「社会思想としてのクラシック音楽」(新潮選書)
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猪木武徳は経済学者(阪大名誉教授)で政治学者の猪木正道の子。クラシック音楽にも造詣が深く、単なる音楽史の本ではなくてクラシック音楽が生まれ育ってきたヨーロッパ近世社会の変容と音楽の関係を説いている。教会と関係が深かった時代から19世紀の市民革命を経て古典派からロマン派へクラシック音楽は広がり、20世紀にはソ連の社会主義体制とショスタコーヴィッチらの音楽は深く関係していた。

・橘 玲 著「無理ゲー社会」(小学館新書)
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「無理ゲー」とは完全攻略が極端に難しいゲームのことを指すのだそうだ。現代の社会の「生きづらさ」は「無理ゲー」と似通っている。橘玲という人の文章は初めて読んだが、非常にわかりやすく、冷徹な文章で皮肉交じりの部分も多い。決して楽観的な近未来を見ていない。人によっては好き嫌いがハッキリ別れると思われる。

・田中 創 著「ローマ史再考 なぜ『首都』コンスタンティノープルが生まれたのか」(NHKブックス)
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ローマ帝国は「滅亡」したのではなく、コンスタンティノープルに重心が置かれながら延命した。しかしコンスタンティノープルとて、最初から首都機能を完全に備えていたわけではない。コンスタンティヌス帝以降の皇帝支配とコンスタンティノープルの成熟、一方の西ローマ帝国の衰亡を描いている。


マンガ
・野田 サトル 著「ゴールデンカムイ 27」(集英社 ヤングジャンプコミックス)
・ヤマザキマリ 著「オリンピア・キュクロス 6」(集英社 ヤングジャンプコミックス)
・柘植 文 著「喫茶アネモネ 1」(東京新聞出版局)

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シリーズ物は継続。新たに東京新聞に連載されているカラー漫画「喫茶アネモネ」を読み始めた。
この古びた喫茶店のよぼよぼマスターとウエイトレスのよっちゃん、常連客のたわいない日常を描くのだが、なぜかホッとするしクスッと笑える。よぼよぼマスターの秘密が徐々に明かされていくのもよい。