2023年3月に読んだ本

・石破茂、鈴木エイト、白井聡、古谷経衡、浜矩子、野口悠紀雄、鈴木宣弘、井上寿一、亀井静香 著「自民党という絶望」(宝島社新書)
book2023.08
執筆者の顔ぶれがすごい。痛烈な自民党批判。特に白井聡の舌鋒は鋭かった。

・武田 砂鉄著「父ではありませんが 第三者として考える 」(集英社ノンフィクション)
book2023.09
何冊目かの武田砂鉄の著作。個人的に子供を持っていなくても、これだけ優しく論考を表現できる人はなかなかいないのでは?

・斎藤 幸平著「ゼロからの資本論」(NHK出版新書)
book2023.07
これも斎藤幸平の何冊目かの本。あとがきを読んだら、以前読んだことがある「100分で名著」の資本論の文章を改訂したものとわかったが、それでがっかりするような内容ではなかった。非常にわかりやすく、晩年のマルクスの持続可能社会へのまなざしという、今までにない視点が提示される。

・柴 宜弘著「ユーゴスラビア現代史 新版 」(岩波新書)
book2023.11
これまたかなり以前に呼んだ本の改訂版。残念ながらユーゴスラビア研究者の柴宜弘さんは亡くなってしまった。しかしユーゴ解体から30年近くを経た今の旧ユーゴの状況まで踏まえて最新の知見が明らかにされている。一般啓蒙書ではあるが、学者の絶筆本であり、内容はぜひ踏まえるべきものだった。

・南波 永人著「ピアノマン 『BLUE GIANT』雪祈の物語」(小学館)
book2023.15
コミック「BLUE GIANT」と映画の他にさらに小説バージョンも出ていた。こちらはピアニスト沢辺雪祈を主人公にしたもの。コミックにも映画にもないエピソードも描かれていた。また、映画を見てJASSのメンバーが出す音の表現として抽象的な絵や色が重要な役割を担っていたが、この小説でも色がキーワードになっていて想像力を刺激された。

映画「ブルージャイアント」

先日、「読んだ本」でブルージャイアントの映画を見たことを記した。
もう一度観賞したい気持ちが強くなり、2度目を観に行った。1回目は新宿歌舞伎町、2回目は日本橋。いずれも平日午前中の大スクリーン、DolbyAtmosで。新宿ではお尻から振動が伝わってきたのだが、日本橋ではそこまでの振動はなかったが音響はよかった。
main

2回目になると落ち着いて細部にこだわることができそうだったが、話の進行とサントラ盤の音楽の順番が同じで、冒頭のコルトレーンの名曲「impressions」からのめり込んだ。
この「impressions」、劇中主人公の宮本大が隅田川のほとりで一人演奏している時にもソロインプロビゼーションとして出てくる。残念ながら後者はサントラ盤には収録されていないが、個人的にはソロの方が好きだ。また、カツシカジャズフェスティバルで演奏する「first note」と最後に演奏される同曲ではしっかりバージョンが異なることもわかった(同じバージョンではドッチラケになってしまうので当然だが・・)。

映像に東京のあちこちが描かれ、特に隅田川やスカイツリーが出てくるところが東京下町在住民としては嬉しい。前半に出てくる永代橋は毎日の通勤ルート上にある。葛西臨海公園や晴海埠頭公園がでてくるところを見ると、主人公の宮本大と同級生の玉田が住んでいるところはおそらく江東区だろう。玉田は大学生(早稲田大学)だから中央区にはなかなか住めないはず。ちなみに、仙台での出身高校は「青葉二高」だが、早稲田大学に進学できる進学校としては仙台二高がモデルに違いない。

主人公が夜の屋外練習場として探し当てた場所は永代橋と清洲橋の間にある隅田川大橋(首都高と一般道の二重構造)のたもとだということは映画、原作漫画ともに推測できる。だが原作漫画のコマをよーく見ると、実は岸沿いの水の中と橋の下に大きな石が配置されていて川面の高さが足下に近いところだとわかる。この川べりは足下より水面がだいぶ下にある隅田川ではなく、旧中川の河川敷に酷似している。隅田川の岸辺をリアルに描くと主人公と川が遠くなってしまうので、旧中川の写真を参考にして混ぜたのではないかと思われる。ただし、旧中川にはフェンスがない。

演奏中の、歪めたり輝いたり抽象化されたり、情熱のほとばしりやこれでもかというカット割りが好きだ。大音量で音楽に浸っていると、中盤くらいから自然に涙が出てきてしまう。これは1度目も2度目も同じ。今回も感動して日本橋コレドを後にした。ちょうどお昼休みになった時間帯で、あちこちにキッチンカーや弁当売りの軽自動車が出ていて、オフィスから昼食のために出てくる社会人の多さにうろたえた。平日の日本橋ってこんな感じなんだなと思いつつ、隅田川まで歩いて両国駅まで行こうと江戸通り沿いを歩いたが、そういえば江戸通りはそのままダイレクトに浅草橋駅前を北上するのだった。