2023年11月〜2024年1月中旬までに読んだ本

・筒井 康隆著「カーテンコール」(新潮社)
book2023.49
筒井康隆の「最後の作品集」という帯に惹かれて久しぶりに新館単行本そのものを購入。短編集だが、少し枯れた筒井康隆の文章があった。最後の方の短編の印象が残る。

・伊藤 彰彦著「映画の奈落 北陸代理戦争事件」(新潮社)
book2023.47
表紙の通り、東映ヤクザ映画の中に副題の「北陸代理戦争」という映画があった。一回観たことがある。実在の人物をヒントに、脚本家高田宏治がストーリーを創り上げたものだ。映画のシーンに喫茶店での襲撃があるのだが、映画封切後に実際に暴力団員の抗争が喫茶店を舞台にしてあった。映画が先行し実際の事件が後追いで生じたという衝撃的な事件だった。それらを追った本である。著者の本はこれで三冊くらい読んだが、この本については最後の方の著者の思い入れたっぷりの文章に少しついていけなくなった。

・内田 樹・白井 聡著「新しい戦前 この国の"いま"を読み解く」(朝日新書)
book2023.48
対談集である。読んでいるとこの国は本当にまずい状況に置かれていることがわかる。裏金を作って懐に納め、特捜部からの追及があると派閥解消などという弥縫策で済ませようとしている連中にかじ取りを任せていることはさらに危険な状況の生成に繋がらないのか?

・大澤 真幸・斎藤 幸平著「未来のための終末論」(朝日新書)
book2023.32
これまた大澤と斎藤の対談集。しかし対談そのものは本の4割で終わってしまい、三田宗介の論の紹介、ブックリスト、最後に大澤の論文が後半を占めるという不思議な構成になっていた。それなら別の本にすればいいのに。大澤の論は一般人には難しくて(衒学的で)なかなか理解ができない。

2023年9〜10月に読んだ本

・辻野 弥生著「福田村事件」(五月書房新社)
book2023.39
映画にもなったのでこの事件は有名になった。まずはルポルタージュを読んでから映画館に足を運ぼうと思って8月末から読み進めていた。この衝撃的な事件を含む関東大震災後の朝鮮人・中国人・社会主義者・被差別民に対する虐殺事件を無かったことにしようという動きは容認することはできない。

・伊藤 彰彦著「仁義なきヤクザ映画史」(文藝春秋)
book2023.40
今まで読んだヤクザ映画に関する書物の中で、最もわかりやすく、自分が見た映画が最も取り上げられていて楽しく読んだ。

・平山 亜佐子著「明治大正昭和 化け込み婦人記者奮闘記」(左右社)
book2023.36
女性記者の黎明期、スパイのように素性をかくして忍び込みレポートを書いた人たちがいた。
面白おかしくそれらが書かれている。11月初旬時点でまだ読了していない。

・中井 和夫著「ウクライナ・ベラルーシ史」(山川出版社)
・黛 秋津(編)「講義 ウクライナの歴史」(山川出版社)
book2023.44book2023.43
少しウクライナの歴史について勉強するために購入。前者は電子書籍、後者はごく最近の発刊なので紙で。いずれも非常に勉強になった。私が知りたかったのは近世18世紀までのウクライナ史(ポーランド分割まで)だったので、近現代についてはやや斜め読みになった。
ウクライナの全土がかつてポーランド・リトアニア連合王国の領土だったことは意外と知られていないのではないか?17世紀半ばのコサック反乱以降、ポーランド・リトアニアは選挙王政になり、衰退傾向を迎える中、東方からウクライナの土地を獲得していったのが新興国ロシアであった。ロシアは大北方戦争以降急速に領土を拡大し、ウクライナとベラルーシを獲得、黒海とバルト海に進出して強制を誇るようになった。11月初旬に購入したが、現時点でまだ読了していない。

・東本 昌平著「RIDEX 21 」(モーターマガジン社)
book2023.41
続刊を買ってしまった。バイクの絵がきれいだ。

2023年8月に読んだ本

・小川 幸司著「世界史とは何か 歴史総合を学ぶ③」(岩波新書)
book2023.27

・鈴木 エイト著「自民党の統一教会汚染2 山上徹也からの伝言」(小学館)、
・鈴木 エイト著「『山上徹也』とは何者だったのか」(講談社)

book2023.29book2023.35

・重松 伸司著「海のアルメニア商人 アジア離散交易の歴史 」(集英社新書)
book2023.28

・重松 伸司著「近代仏教スタディーズ 仏教からみたもうひとつの近代 」(法蔵館)
book2023.31

・羽根田 治著「これで死ぬ アウトドアに行く前に知っておきたい危険の事例集 」(山と渓谷社)
book2023.37

・佐古 清隆著「ひとりぼっちの日本百名山 」(山と渓谷社)
book2023.38

2023年6〜7月に読んだ本

・井上 文則著「軍と兵士のローマ帝国 」(岩波新書)
book2023.22
発刊後すぐに読みたかったので、久しぶりに紙の本で購入。ローマ帝国、特に共和政時代のローマを理解する上でキーになるのは、ギリシアのポリスと同様の市民(成人男子)が政治と防衛(侵略)の双方を担うというシステムである。共和政ローマが領土拡大を進めていくとこの原則維持が困難になり、軍制も大きく変化して帝政ローマに向かっていく。「軍と兵士」はローマを理解する上で非常に重要なのである。そこを復習するのに役立った。

・鈴木 大介著「ネット右翼になった父 」(講談社現代新書)
book2023.14
著者自身の父親が退職してから亡くなるまでの間になぜネット右翼に変貌していったのかを掘り下げている。同じような世代の人にとって他人事とは思えないような父子関係を振り返っていく。最後は自分に戻ってくるのだが、「ネット右翼」そのものへの掘り下げよりは父子関係が主体になってしまい、自分史を読まされているような気分になってきた。

・岡本 隆司著「曽国藩」(岩波新書)
book2023.13
下関条約の清朝全権となった李鴻章は有名だが、その師、先輩官僚でもある曽国藩はさほど有名ではない。著者は李鴻章、袁世凱についても岩波新書を上梓している。若き曽国藩の科挙合格までの苦労や、老後についての記述でもう少し書き込んで欲しいところはあったのだが、そこは史料が足りないのかもしれない。

・白井 聡著「マルクス 生を呑み込む資本主義 」(講談社現代新書)
book2023.18
マルクス思想と現代資本主義の関係をもう一度復習する本。白井聡の著作は毎回とても読ませる。

・辻田 真佐憲著「戦前の正体 愛国と神話の日本近現代史 」(講談社現代新書)
book2023.24
「保守的」と自称する(私は保守だとは思っていない)人たちが理想とする戦前に見られた「神話」に端を発する制度や習慣が、実は底が浅いものである、江戸時代以前にさかのぼることが難しい、ということは意外と知られていない。あたかも太古の昔から連綿と続いてきているもの、という勘違いが現代の亡霊になっている。「保守派」がこだわる家族制度(まあほとんど神道系宗教や統一教会の影響じゃないかと思われるが)なんてものは明治以降せいぜい昭和30年代までの家族を類型化したものに過ぎないし、この本に書かれるように「神道」にまつわるあらゆることがいかがわしい後付けの歴史になってしまっている。
そこにこだわったのはいいのだが、この本はそこに終始してしまい、そこからの発展がない。読み進めてもいいかげんそこから脱却してよ、と思う。


・井上 義和、加藤 善子編「深志の自治 地方公立伝統校の危機と挑戦 」(信濃毎日新聞社)
book2023.23
この本が対象としている長野県松本深志高校は私の母校である。旧制松本中学の時代から数えると、学校設立年は曖昧だがすでに140年の歴史がある。旧制中学時代から「自治」がモットーであり、私が在学していた70年代末から80年代初頭にかけての時代も、また現在もそれは不変である。その自治について、卒業生や外部の研究者も巻き込んでまとめ上げた本である。商業的にはこの学校卒業生でないとまず売れないと思われ、県内の他地域では一顧だにされないであろう。長野県は盆地の寄せ集め、他の盆地には敵対意識こそあれ、共同意識は薄い。
私は同僚がこの本に寄稿しているので、買わずに同僚から献呈本としていただいた。
研究が進められていると同僚から知らされた時、「あまり意味のない研究を始めたな」と思っていた。その気持ちはいまでも変わらない。ちっぽけな一つの学校内で生徒と教員が紡いでいく「自治」を他校と比較してどうなるのか、という冷めた目で見ていた。なるべくこのプロジェクトから遠ざかっておこうと思っていた。コロナ「禍」というべきか、私から見ればコロナの「おかげで」研究は大げさなものにならずに済んだようだ。本にまとまってからその内容を見ると、卒業生研究者の懐古趣味的な文章もあるが、近年の動向に注視する部分が多く、今の高校生の方が昔よりも「他者を尊重した自治」ができているのではないかと思わせてくれた。その一例が21世紀になって成立し現在まで続いている生徒会予算の折衝を議論によってまとめていく会議「折衝会」であろう。


コミック
・信濃川 日出雄著「山と食欲と私 17 」(バンチコミックス)

book2023.33

・ヤマザキマリ著「プリニウス 12」(バンチコミックス)
book2023.30
ついに「プリニウス」も完結。ぜんそくの発作は伏線だったのか・・

・東本 昌平著「RIDEX 1〜20 」(モーターマガジン社)
book2023.34
ついに買ってしまった。大人買いで20巻まで。まだ半分しか読んでいないが、1話完結なのがいい。フルカラーでバイクと人物の絵がキレイ。男性はほとんどがむさくるしいヒゲ面中年で、女性はグラマラスでセクシーな若い女というのがパターンだが、1話完結なので登場人物の見分けをせずに済む。表紙がセクシーなのはいまの時代なかなか許容されないだろうなあと思って眺めていたら、最近刊の表紙はそこがだいぶマイルドになっている。
昔はバイク雑誌が山ほどあったのだが、最近ではあまり見ない。この漫画は老舗「月刊オートバイ」の特別付録に掲載されてきたものらしい。バイク雑誌もウェブに圧されてしまったなあ・・ツーリングにターゲットを絞った雑誌として「outrider」があり、学生のころ発刊されて第1号からずっと保管していたが、バイクを一時中断した時にすべて処分してしまった。もう日本全国だいだいお決まりのロードサイドになってしまったし、そうではないところを自分で見つけて走ってみるのはツーリングの醍醐味で、見つけたところは大きな宣伝をしようとは思わないから、雑誌から得る情報はあまり欲しいとも思わなくなった・・・バイク漫画ももうほとんど無いのかな?

2023年4〜5月に読んだ本

・藤原 辰史著「給食の歴史 」(岩波新書)
book2023.12
さまざまな社会史のテーマで本を書いている藤原辰史の本。ちょっと取っつきにくくて時間がかかってしまった。

・室橋 裕和著「北関東の異界 エスニック国道354号線 」(新潮社)
book2023.16
新聞で知った本。北関東を走る国道に354号があるが、その道路沿いにエスニックグループが住んでいてユニークなコミュニティが成立しているということだ。時々走ることもあるが、そういった匂いはあまりしていなかっただけに、これから少し意識してみようと思った次第。

・廣末 登著「テキヤの掟 祭りを担った文化、組織、慣習 」(角川新書)
book2023.21
この本も書評で知った。「男はつらいよ」の寅次郎はテキヤだが、各地に根ざしたテキヤ組織があるからこそ、フーテンの寅は旅をしながらタンカ売ができるのだ。だって、寅さんはどこから売り物を仕入れ、売れ残った商売品をトランクに入れて持ち歩いたりはしていない。彼らが暴力団とは異なる組織で、暴対法のおかげで生活が苦しくなっているのは同情に値する。

・伊藤 健次著「分県登山ガイド 北海道の山 」(山と渓谷)
・日下 哉著「北海道 安全な登山」(北海道新聞社)

book2023.19
book2023.20
うーん、北海道で旭岳からトムラウシまでテント縦走したいなあと漠然と思っているのだが、いつになったら果たせるやら。北海道での登山そのものよりも、北海道へのアクセス(ガスカートリッジを持ち運んで、できれば車中泊などしながら行きたい)、登山中のクマとの遭遇対策、登山中のウンコ処理の問題がネックなのだよ・・

・小梅 けいと著「戦争は女の顔をしていない4 」(KADOKAWA)
book2023.17
すでに4巻目。戦争中の悲惨なエピソードは尽きることがない。そしてそれは、現在のロシア・ウクライナ戦争でも繰り返されている。早く悲惨な行為が無くならないだろうか。