仕事山行 雪の雲取山

久しぶりに年末の仕事山行に行った。運悪く、数日前の天気予報では奥多摩町一帯は22・23日とも雨の予報だった。ということは確実に雪になる。幸い、近づくにつれて22日夜から23日朝にかけての降雪に限定されたので行動中に降られることはなかったのだが、三條の湯から雲取山荘までの行動時間が7時間30分となってしまった(夏のコースタイムは3時間20分)。

22日11時、奥多摩駅から丹波行きバスに乗って「お祭」バス停で下車し、後山林道を延々と歩く。同じバスに乗った人は単独行の男性1名だけで、我々は10名の青少年と私を含む2名の帯同者でバスを独占した。この時期、あまりに寒くて日曜日の日中でも山に行く人は極端に少ないようだ。奥多摩湖の駐車場でも人はまばら。

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後山林道

後山林道を最初から最後まで歩くのは今回が初めて。だいぶ前、6月に三條の湯まで入って幕営して雲取山に登ったことがあるが、その時はタクシーでできる限り奥まで入った。今にも雨が降り出しそうな気配だが、なんとか雨にたたられずに15時に三條の湯に到着。先行していた単独男性がテントを張り終えていた。我々は今回は小屋素泊まりである。ちょっと軟弱かなと思ったりしたが、結果的には雪中キャンプにならず、設営・撤収の時間も無駄にならず、暖かい小屋生活ができた。小屋泊まりだと熱い湯がサービスされるので、ガスを使わなくてもテルモスに紅茶を淹れることができて助かった。

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三條の湯の小屋を見上げる

三條の湯の小屋番の長髪・ひげ面の男性はもと警察官・消防士・レスキュー隊員を遍歴してきた人で、なんとなく柔らかな感じがする人だった。せっかく小屋に泊まった上に我々だけで独占状態だったので、せっかく薪を使って暖めた湯だということもあって、初日にも関わらず風呂に入らせてもらう。風呂から上がる頃、雪がちらつき始めた。これは明日はどうなることか。部屋には石油ストーブがあって暖かく過ごせたが、翌朝ヒザ上の積雪があったら軽アイゼンだけでは無理だから下山しなくてはならない。

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朝、一面水墨画の世界へ

23日、朝の積雪量は小屋前の吹きだまりで10cmほど。上に行けば行くほど積雪量は増えるだろう。どこかで重要な判断をしなくてはいけない。青少年たちは装備の点検が甘すぎ、さまざまなトラブルが起こる。やれ手袋が小さくて手が入らない、スパッツの装着ミス、軽アイゼンの装着が初めてで手間取る、アイゼンのベルトが極端に短い(以前の小さな靴だとベルトが余るので切ってもらったらしい)、アイゼンの幅が調整できるモデルを持ってきたが未調整、などなど、夏の仕事山行もそうだったが、10人もいるとそれだけで時間が過ぎていく。普通は初めて使う装備であれば家で仮に装着してみるとか、調整をするなどの点検を怠っている。普通ならここで即刻下山命令を出してもいいくらい、一昔前の山小屋のオヤジであれば怒声一喝だ。

失敗も重要な経験なので、後でみっちり反省させるとして(しかし反省がすぐに生かされない)、予定時刻よりも遅れて8時30分出発。テント泊の単独男性は11月にも歩いており、我々より1時間近く早く出発したので、彼のトレースを追っていけばあまり間違いはなさそうだ。

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晴れたけど、木からの落雪あり。

三条ダルミという峠で稜線に出る長い斜登行ルートをジワジワと登っていくが、尾根をいくつも巻く中で日の当たりにくい北東斜面の雪はアイゼンが効かない雪で難儀する。さらに台風の影響なのか、迂回ルートに誘導され、急な尾根を乗り越えるようになっていたので時間をロスする。歩きが長くなってくると先頭とリーダーの判断にズレが生じ、リーダーに従うべきところで反論や疑問が全員の前で呈されるようになってきた。これではパーティ行動の基本が揺らいでくるので、リーダーに従うようにきつく言い渡すが、それでも止めようとしない者がいる。こういう時、彼らに帯同するのがほとほと嫌になる。リーダーはたった一人。最も年長とはいえ、歳の差はわずかでしかなく、普段は仲がいい仲間なので、複数人が反論すれば強く出ることは難しい。山中で結局自分一人で結論を導かねばならないリーダーが孤立するのは望ましくない。意見や反論はそこそこにして、最終的にはリーダーの判断を尊重する姿勢が欲しい。

三条ダルミで14時20分、雲取山山頂まではスムーズに登れて15時過ぎ、雲取山荘に16時であった。先行した単独男性も15時着だと言っていたので、ルートファインディングに要するタイムロスはないが、極端に遅いわけではなかったようだ。夏のコースタイムは積雪期には全く当てにならないことが今回も痛感された。

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雲取避難小屋から山頂へ

雲取山荘の部屋は機密性が三條の湯よりも高かったが、炬燵のみでちょっと寒かった。ガスを扱える場所が屋外の別棟で、夜のうちに翌日の紅茶を淹れておいたほうが合理的だった。今回、寒さに備えて食器として100円ショップのプラスチック製小どんぶりを持っていったが、食後にみそ汁を作ってご飯のこびりつきを取ることができて重宝した。

翌朝の朝はロールパンのみ。スープが出るということだったが、勝手に周囲の意見を聞いて無しにしたのですぐに出発したいと言われ、ちょっとそれはないんじゃないのと言いたくなる。昨夜決めた出発時刻よりも少々早くなるが、決めたことを簡単に覆すとは?

再び雲取山山頂で前日拝めなかった富士山、南アルプス(白根三山は飛竜山の影になるが、塩見・荒川三山・赤石・聖などはバッチリ)、浅間山、筑波山などを眺める。東京方面の大都市が一望でき、スカイツリーや東京湾まで見渡せた。

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山頂からの富士
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南アルプス(中央に塩見・荒川、右手に白根三山)

下山。廃墟となった奥多摩小屋近くで登ってきた数人とスライドしたが、彼らは七ツ石小屋に泊った人たちだろうか。七ツ石山のピークは巻いて、七ツ石小屋前を通過して尾根を下っていく。標高1200mあたりでアイゼンを外し、あとは転げ落ちるようにして鴨沢集落のバス停に13時30分に到着。下山にも雲取山荘から6時間以上かかった。

下山後、結構早い時間からふくらはぎの筋肉痛あり。帰宅後すぐに銭湯の豊富な湯に浸かって体を暖めた。

それにしても、クリスマスを迎えても寒波が弱くてスキー場に雪がない。せっかくの会津高原高畑スキー場のシーズン券もその使用が先送りだ。この分だと東北道方面はまた人工雪のハンタマに混雑覚悟で行くか、同じような積雪量の裏磐梯方面(グランデコ)へ行くか、夏油高原スキー場まで足を伸ばすかしないと年内は滑れそうもない。関越方面でもかぐらスキー場だが、そのかぐらですら積雪量が1mに達していない上、上部ゲレンデしか開いていない。うーむ。新年の志賀高原はどうなっちゃうのかな?