礼文島西岸単独行

このレポートは礼文島内の地名が頻出するので、適当に地図を見ながらご覧下さい。
適切な白地図があれば作りたかったのですが、素材が見つからず、地図を作成することはしていません。

7月25日、利尻島の鴛泊FTで私は焦っていた。天気は明日から下り坂、南西風が強く吹く。礼文島で漕ぐとしたら今日の午後しかない。フェリーが礼文島の香深に着くのが10時10分、民宿の送迎車で船泊へ行き、カヤックのパックを受け取ってカフナを組み立て、昼食を食べて出艇するのはどう考えても12時過ぎから13時になろう。こんな時に限って天気はメチャクチャいいのだ。時間が惜しい。

焦っても仕方ないと思いつつも、フェリーの速度がもどかしい。
香深までは北東微風の凪状態。乗客はのんきにウミネコにエサをやっている。

定刻に香深港に着いて、民宿「ゆうなぎ」所有の3代目プリウスで船泊へ。部屋に案内されてザックを置き、必要なもの(利尻の湧水が入ったナルゲン水筒、帽子、行動食、カメラなど)だけザックから取り出して、民宿の目の前の道路脇でカフナを組む。順調に約20分で組み上がって、スポンソンのエアだけ入れずに昼食を食べに行く。しかし、民宿目の前の食堂はコンブが上がったあとの漁師たちが占拠していてとても時間がかかるという。宿の兄ちゃんに相談して、車で金田ノ岬にある「あとい」へ行き、奮発して2,700円のウニ丼を注文。新鮮なウニだったが、あまり味わう間もなく取って引き返し、カフナを海岸に出す。船泊の大備(おおぞなえ)集落にある「ゆうなぎ」の目の前に朽ち果てた小さな桟橋があり、その脇の白い砂浜から12時20分出艇。

船泊海岸から出艇

とりあえず船泊湾を横断しながらゴールを考える。宿のにいちゃんはトド島とスコトン岬の間に海流があるので渡るのは止めておいた方がいいとアドバイスしてくれた。こちらも時間に余裕がないのでトド島は仕方なく諦める。湾内は微風による北東からのうねりが若干あるが、波高はわずか。カフナなら鼻歌を唄いながら漕げるが、普段と違って平パドルなので、いつもより水の抵抗を感じる。Gパドルとの違いってのは一掻きの重さなんだなと思う。ところどころに定置網の浮きがあり、それを避けながら白浜の漁港の北側をかすめ、スコトン岬近くの民宿の目の前を通過。浅瀬になったので海底がよく見える。水深は10m近くあるだろうが、礼文ブルーの透明度は非常に高く、スコトン岬を回り込むまで笑いが止まらなかった。

島最北の宿スコトン荘


トド島までわずかなのに・・

南もいいけど北もいい

スコトン岬も今日の海況では岸ベタで回り込める。トド島に後ろ髪を引かれながら進路を南にとる。ウミネコやウミウが多く、岩場にはウミネコのヒナもヨチヨチ歩いていて不審な赤いカヤックをしきりに警戒している。また漕いでいるとくちばしの太い海鳥が浮かんでいて、近づくと羽ばたいて逃げていくのだが、飛び立つのはヘタで水面をバタバタ進んで逃げていく。何という鳥だろうかと思っていたが、ウトウのような気がする。鳥には詳しくない(花も詳しくないけど)ので単なる推測である。

親子ウミネコ

ある岩場のそばを通ったら、アザラシが休憩中。そっと近づいたつもりだったが30mほどの距離でアザラシたちは海に入ってしまい、最接近はできなかった。海に入ったアザラシたちは一様に顔をこちらに向けており、私が諦めて進み始めると一定の距離をとってついてくる。振り返ってみたらアザラシの顔が15mほど後方に見えたのでまたニヤついてしまった。

遠くから凝視される

その後アザラシたちと遭遇することはなかったが、鮑古丹を過ぎ、ゴロタ岬の狭い水道を抜けたら風景が広がった。ゴロタの浜沿いには漕がず、鉄府の集落を左前方に見ながら澄海湾(すかいわん)へと入っていく。海水の美しさで有名なところらしい。案の定観光客が群れを成しているのが下から見えるので、近寄らず少し離れたゴロタの浜近くで漂いながらスプレースカートを開放し、カヤックの上で休憩しながら行動食を食べる。だが蚊の襲撃を受けた。ここまで約1時間と少し。いいペースだ。時間によっては西上泊で上がるか、召国まで南下して引き返すことを考えて漕ぎ始めたが、召国に2時までに着けるようならそのままワンウェイで元地まで漕いでしまったほうが得策かもしれない。民宿の送迎は島の北部の西上泊なら近くていいが、南部の元地だとかなり遠くなる。迷惑をかけることにはなるが、夕飯に間に合えばいいし、今日の宿泊は私一人だと聞いていたので、決行する。召国には予定通り2時に到着。番屋がいくつか見えるが、住んでいることはなかろうと思われる。

空も海も蒼い

利尻山も見え・・

そろそろ左手は高い崖になってきているのだが、残念なことに海食洞が見つからない。刺激がないのでロックガーデンの水路を進んでいくが、急に浅くなっている部分があり、時折ハルをこする。よく見ると岩には立派なコンブが生え、岩肌にはウニがびっしりついている。時間に余裕があれば覗いてみるのだが・・海水温は想像より高いようで、対馬海流の影響だろうかと想像する。2年前の積丹半島北岸よりも海水温は高い。

召国前後からアナマ岩までは陸路を通る8時間トレッキングコースも崖の上にあるので、視界の中に人工物や人影を見ることはない。海況がよいので安心だが、少しうねりなどが入ってくると厳しいところだと想像できた。ところどころに立派な滝が見える。海に直接落ちる落差の大きい滝だ。これも上陸して水浴びする余裕はなかった。

一番落差のあった滝

ロックガーデン水路はこんな感じ

前方に数軒の集落が見えた。島の中部にあり、自動車が通れる道路が通じていない宇遠内(ウェンナイ)集落だろう。防波堤手前で上陸してみるが、干した昆布をまとめている老夫婦がいた。不審船ではないことをわかってもらおうと声をかけたが、婆さんから「きょうは凪だからいいねぇ」と言われただけで、老夫婦は黙々とコンブをまとめていた。

宇遠内。寂しいところだ

この日初めて上陸

集落の探索をしてみようかと思ったが、時間も16時近くになってきているので先を急ぎたい。10分ほど休憩して、再び漕ぎだす。あと1時間あれば十分にゴールの元地まで着くだろう。「かね忠ノ島」を過ぎると元地の港や集落が見え、16時40分にメノウ浜に上陸。駐車場のはじっこにカフナを上げ、乾燥した風で乾かしながら撤収。観光客のおじさんから声をかけられた。聞けば千葉からきて、退職後に2ヶ月ほど北海道に滞在しているようだ。奥さんも連れてきているそうだが、連れて来られる奥さんの気持ちを聞いてみたい。

撤収が半ばにさしかかった頃宿に連絡を入れ、元地まで迎えにきてもらうことにする。順調に片づけが終わり、プリウス号が到着するまでブラブラして過ごす。上陸した頃は海岸に人がいたのに、ふと気付いてみると誰も周りにいなくなった。水分は摂っていたつもりだが、それでも給水不足だったのか、自販機で購入した飲み物を飲み干してしまう。特に下半身がコックピット内でサウナ状態だったから、発汗量は相当なものだったはずだ。

元地集落が見えてきた

わずか4時間のツーリングで漕行距離は約25km。もう少しゆっくり時間をかけて漕ぎたかったが、充実したツーリングだった。この日のコンディションで朝から漕ぎ始めれば1日で礼文を一周できたかもしれない。

きれいな夕日でした・・

利尻山へ

7月24日の朝、3時に起床して4時20分に北麓キャンプ場を出発。
パーティは少年9人、大人2名の11名である。前日稚内でザックごと持ち去られた少年はもう一人の大人と靴サイズがたまたま合致したのでその靴を借り、サブザックなしで登る。見た目ほとんど登山シロートに見えてしまうが、登山靴だけはしっかりしているので(スニーカーにジーンズで登っている大人もいる)よく見ればそれとわかるはずである。

最初はゆるやかなすそ野を登るトレイルで、なかなか標高が上がっていかない。前日キャンプ場までの舗装路アプローチでバテていた最年少の少年の足取りは重い上、11人のパーティになると誰かの靴ひもが緩んだり、段差を越えるのに時間がかかったりして、他の中高年登山者にどんどん抜かれる。いつもはサブザックでのピストン山行はかなり速いペースで登ってしまうのだが、このくらいゆっくりだとこちらは疲れなくてよい。それにしても少し遅すぎる。

森林限界の標高はだいたい600m以上だろうか。しかし笹藪が高かったり、低木が伸びていて視界が開けることがなかなかない。そのうち低木の枝に頭をぶつけ、目から星が出ることしばしとなる。登りでも降りでもこんなに枝に頭をぶつける登山は過去になかった。

6合目の第一展望台(7時50分)で初めて視界が開け、目の前に長官山、背後に海を眺める。しばし休憩。やや北東風が強いか。すると後方からガイド付きの中高年登山パーティが登ってきたが、ガイドの名札を見たら利尻をベースに登山・シーカヤックガイドをしている渡辺さんだった。「先日テレビで見ましたよ」と声をかけたら気さくに礼文島西海岸の状況(特にどこから風が吹き抜けてくるか)を教えて下さった。船泊から元地のコースは一日で漕げるでしょうと教えてくれた。この中高年パーティにも抜かれる。

第一展望台から

6.5合目に簡易トイレブースがある。利尻登山は大雪山系と同じくトイレがなく、簡易トイレのビニール袋持参での登山が推奨されている。私も自分用に一袋持っていったのだが、使用せずに済んだ。何せ私は排便時間がほとんど決まっている、「6時30分〜7時の男」であり、しかも「二度○ソを頻繁にする男」なので、こうした早朝出発の山行では排便のタイミングが非常に気になるのである。この日は4時の排便で事足りたのでラッキーであった。利尻山ではその他に2ヶ所(避難小屋と9合目)簡易トイレブースがあった。

長官山の斜面を眺めながら登っていると、実にこの前衛峰がスキー向きの斜面を持っていることに気付く。登山道から見て右手の浅い沢あたりは山頂1,200mからのほぼ一枚バーンである。スキーするためだけに利尻に来る、というのはあまりに遠くて現実的ではないが、面白いのではないかと思う。

長官山

長官山山頂(1,218m、8時30分)でようやく8合目。その後平坦な尾根を少し歩くと小さな利尻山避難小屋。いままですべてのパーティに抜かれてきたので、最年少の少年にこの後登りきれるか尋ねてみる。ここまででも2歩歩いては立ち止まりため息をつくような状況だったうえ、この休憩で半べそをかいている状態である。ムリはさせずここで同僚に付き添ってもらってエネルギーを補充し、また歩けるようになったら9合目くらいまで登っておいで、と告げて二人を残す。あまりこういうパーティ分割はやりたくはないが、まだ少年には体力と根性が身に付いていないうえ、このままさらに険しい場所で11人が頻繁に立ち止まるのはまずい。もちろん、ここまで4時間以上何も食べずに登らせているパーティリーダーの計画にも問題がある。平地とは違って登山中は頻繁に間食させるべきであった。

ようやく山頂が・・

9名になってややスピードアップ。山頂に近づくにつれ、トレイルがざれて足場が悪くなる上、トレイルの右側がぱっくり崩壊している部分もある。オーバーユースで溝状になってしまったところもあって危険度は増す。2名〜3名で登っているパーティを今度はごぼう抜きして、10時20分に山頂着。山頂部で強い風が吹いていなくてよかった。
360°の視界が得られ、絶景である。

山頂直前

山頂の祠

北峰とローソク岩

11時少し前に下山開始、登りよりも危険を感じるザレ場の急坂を下り、再び避難小屋で最年少の少年たちと合流。聞けば体力回復して9合目まで登ったらしいが、「泣き言を言わない、ゆっくりでもいいから止まらない」という約束をして歩かせたら、意外といいペースで登っていたという。ということは体力不足なのではなく、精神力不足ということか。パーティの中に入ると弱気になってしまうというのは私としては初めてで、どうしたら皆とともに歩けるかわからない。

降りでも何度も枝に頭をぶつけ、小さなコブを作りながら無事14時ころ下山。振り返ってみるとこの日に登頂できたのは大変ラッキーであり、今夏の登山好適日の中でもかなりいい条件だったのではないかと思う。

利尻・礼文の旅

今年の夏の仕事山行は利尻山登山と礼文トレッキングとなった。
24日に利尻山登山を無事済ませ、25日からはフリーにしてもらってその日の午後に礼文島西海岸をカヤックでソロツーリングした。しかし、26日からの道北の天気は悪く、それ以後ほとんど何もすることができなかった。

利尻登山と礼文カヤックツーリングの日の天気が最高だったのだから、達成感は非常にある。

このエントリでは利尻・礼文へのアプローチなどについて日録風に綴ってみる。

7月21日(水)
若い同僚と羽田発の飛行機で函館へ。北海道にしては暑く、黙っていても汗が吹き出てくる。
十数年ぶりの函館駅は新駅舎になり、駅前広場が広々していた。函館から特急「スーパー白鳥」に乗って長万部へ。長万部公園キャンプ場にて少年たちと落ち合う。キャンプ場は駅から4kmほど内陸に入った高速道路のそばだが、非常に静かでいい雰囲気だった。たまたまこの日の受付担当のおねいさんがてきぱきしていてなかなかの美人。夕方、少年たちがやってきてレトルトカレーの夕食となるが、食べている間にも蚊がわんさか体にまとわりついてきて閉口する。夜、ラジオを聴いていたら翌日からの天候は下り坂のようだ。週末の利尻・礼文の予報もよくない。先が思いやられる。夜半に雨が降った。
函館駅

スーパー白鳥

スーパー北斗

ファーストライト

7月22日(木)
長万部駅

長万部から予定より一本早い「スーパー北斗」にて札幌へ。車内販売のおねいさんが美人だったのでついコーヒーを注文してしまった。予定の列車だと札幌で駅から出ることも叶わない乗り継ぎだったが、約2時間の余裕ができたためにアウトドア用品店の秀岳荘本店へ。ヒザサポーターを忘れてしまったので、簡易なベルト式のものを一つ買う。2年前はここでガスボンベを買ったっけ・・昼食は駅ビルで海鮮の定食。これから食事が貧相になるのでしっかりいいものを食べておきたい。

サロベツ(3両編成)

昼過ぎの特急「サロベツ」に乗って稚内へ。約5時間の列車移動だ。旭川を過ぎるととたんに大自然のまっただ中を走るようになる。列車の行き違いやエゾシカの線路への乱入で時々ストップしつつ、午後6時過ぎに稚内着。当初、高台の公園キャンプ場へ移動する予定だったが、翌日のフェリー出発時刻が早く、移動の時間がもったいない上、小雨も降っていたのでライダーやチャリダーのように北防波堤ドームの下でテントを張ることにした。ドームの下まで雨が吹き込んでアスファルトが濡れていた。
今回、持参したのは亡き友人HBYの遺品のBDファーストライト。透湿性のあるエピック素材を使った黄色いシングルウォールテントだ。ポールがスリーブや吊り下げではなく、テント内部で突っ張るのが特徴。フロア素材がシルナイロンで弱いため、エアライズ用のフットプリントの上に設営する。だが暗い中で慌ててテントを設営したため、1本のポール先端でテントウォールとフロアを傷つけてしまった。アスファルトの上に設営したことも原因だ。気付いたのが夕食を食べて戻ってきてからだったので、小さな穴が空いてしまった。少々ガックリする。

北防波堤ドーム

7月23日(金)
この夜、防波堤ドームの脇の道を爆走するバイクや車があり、なかなか静かにはならなかった。そして、朝4時に起床してから少年たちの一人のザックが見当たらないという。どうやら夕食で不在の間か就寝してから車で乗りつけてザックを一つ持ち去った輩がいたらしい。幸い中には貴重品は入っていなかったが、ザックの中の登山靴と食糧が消えた。朝5時に派出所に少年と出頭して被害届を出すことにしたが、被害届を提出するとなると調書をとらなければならず、現場写真を撮る必要も出てくるので厄介なことになってくる。結局乗るフェリーを1本遅らせることになったが、調書は完全には取りきれなかった。被害届を出すか、簡易に遺失届にするかは礼文島から帰ってきてから結論を出すことにして、パトカーでフェリー乗り場に出港10分前に滑り込む。
警察にはザックの管理が甘いと言われ、まさにその通りではあるが、ザックごと持っていくという行為には新宿駅や東京駅でもお目にかかったことがない。札幌駅でも駅舎脇に2時間以上ザックを放置してまったくいじられた気配はなかった。当然山の中ではあり得ないことなので、油断があったことは事実だ。警察官が朝からねちっこく事細かに聞くのは仕事だからしょうがないだろうが、礼文から帰ってきた後の対応のそっけなさから振り返るとイヤらしい扱いだった(礼文から帰ってきたら列車に乗る前の3時間で調書の続きを取り、パトカーで送迎するとまで言っていたのに・・・)。

気を取り直してフェリーの人となる。北海道の離島を結ぶハートランドフェリーはきれいな新しい船を使っていて、料金も比較的安く(利尻・礼文への片道は2,000円強)、快適だ。

利尻島の鴛泊(おしどまり)に到着すると激しいタクシーの勧誘。それをかいくぐって北麓キャンプ場まで約4km歩く。全部舗装路だが標高差は200mある。少年たちの中の最年少の新人の足取りが重く、だんだん遅れが目立つ。大人は3人ついているので、次第にマイペースになってしまい、私が一番早くキャンプ場に到着したが、最後尾の新人とサポート役の少年らが到着したのは30分後だった。利尻登山が思いやられる。

テント設営。ファーストライトのキズが気になる。ここは連泊なのでこの間カラファテで買った前室を装着。快適なわが家になった。貧相な昼食の後、ポン山(444m)に登り、姫沼まで歩く。晴れたのでポン山からの利尻山が素晴らしく、海の眺めも最高である。姫沼までのトレイルはトラバースしながら涸れ沢を何本か横切るルートで、この島にはヒグマがいないから安心して歩けるが、人っ子一人歩いていないのでちょっと寂しいルートだった。



ポン山から利尻富士

ポン山から礼文方面

姫沼の逆さ利尻山

7月24日(土)
礼文が見えた

利尻登山。パーティ行動なのでまさに10時間近くの行動になった。登山の様子は別のエントリで。登山後、2kmほど下の温泉施設で汗を流す。テントで気象予報を見たら何と礼文島カヤックツーリングを予定していた26日、27日は曇りないし小雨で、南西風が強まるという。絶体絶命か?

7月25日(日)

乗客の手から餌をもらうウミネコ

朝9時のフェリーで礼文島へ。10時過ぎに香深に到着し、ここで少年たちと別れ、仕事から解放される。予約していた民宿「ゆうなぎ」のおにいちゃんが運転する島内唯一のプリウス号で島の北部の集落、船泊へ。車に同乗しながら礼文島が南北に長い島だということをあらためて実感する。そして、利尻もそうだったかもしれないが、礼文島の東海岸には集落が点在しているものの、畑がほとんどない、ということに気付かされた。島民のなりわいは農業ではなく、漁業か会社勤務、自営業ということになるのだろう。庭先での家庭菜園さえ見かけられないのはどういうことだろう?
到着後、あらかじめ送っておいたカフナを組み立てる(ちなみに配送料金は「ゆうパック」で1,700円だった)。たとえ途中までしか漕げないとしても、この日の午後勝負である。その後のツーリングは別エントリで。

7月26日(月)
夜半から雨が降る。小雨にはなったが、予報通り南西風が吹き抜けてくる。次第に民宿の目の前の船泊湾にもウサギが飛び始める。前日に漕いでおいてよかったと胸をなで下ろす。が、この日はもうやることがない。トレッキングをこの強風と小雨の中で一人でやろうという気が湧かない。体も登山とカヤックで疲れている。

礼文神社参道から船泊集落

礼文神社

軽い散策に切り替えて、船泊集落から2kmほどの高山植物園へ。レブンアツモリソウやレブンウスユキソウを目の当たりにする。海岸べりではもう高山植物も終わってしまっているので、培養されたものとはいえ実際に目にすることができてよかった。その後、九種湖の周遊路を一人歩く。礼文にもヒグマはいないので、安心だ。少年たちがテントを張っているキャンプ場に近づいた時、胴長の小動物が目の前を横切った。テンかイタチであろう。キャンプ場は集落に隣接しているので、こんなところでお目にかかるとは思わなかった。


アツモリソウ(右)とウスユキソウ(左)

九種湖畔にポニーが1頭

いったん宿に戻り、近くの食堂でラーメンを食べてからカヤックを近くの郵便局で送り返す。民宿「ゆうなぎ」は出艇するにもカヤックを郵便局から送るにも30m程歩けばよいのでうってつけの場所にある。「ゆうパック」料金は、局員に食い下がったものの往路の安い料金にはならず、しかしなぜか160サイズに縮んで1,900円だった。

午後はさらに風が強まった。幸い雨は止んでいるので、船泊の東にある金田ノ岬までアザラシ君たちを見に行く。
船泊の海岸でウインドサーフィンをやっている方が一人いたので、それを見学がてら砂浜の穴あき貝を拾う。落ちている二枚貝の貝殻にはほとんどといっていいほどきれいな穴が空いている。調べるとツメタガイという巻き貝が二枚貝の殻に穴をあけて食べた跡なのだそうだ。穴にヒモを通せばペンダントになる。いい場所に穴が空いている貝殻を4つほど選んで拾った。砂浜を歩くと飛んできた砂で足元はおろか耳の中まで砂が入ってくる始末。

船泊湾に白波が立つ

寂しげな道路をひたすら歩き、岬を回ったら風が遮られており、案の定アザラシ君たちが浅瀬で風よけをしていた。しかしなんでアザラシたちは体をのけ反って休んでいるのだろう?人間なら筋肉が辛くて数秒しかできないポーズだ。


岩礁で休むバナナ姿勢のアザラシたち

7月27日(火)
海況はさらに悪くなる一方なので、朝一番のフェリーで稚内へ戻る。予報では利尻水道の波の高さ3m。確かに水道の真ん中では船がかなりローリングした。だが酔うほどではない。普段のカヤックでのロール練習の成果かもしれない。
YH桃岩荘の見送り

少年たちも同じフェリーなので、稚内警察へ出頭しようと電話で遺失届を出したいと話したら、パトカーでの送迎はなくなり、電話でコトは済んでしまった。かなり激しく雨が降っているが、ザックだけ宿泊予定のホテルに預かってもらい、中心街へ昼食に出かける。稚内の中央商店街はかなり寂しく、ロシア語の看板だけが目立つがロシア人はいない。やっと見つけた食堂で久しぶりに肉を食う。民宿泊まりでは毎食サカナベースだったのでちょっと嬉しい。その後また「サロベツ」に乗る少年たちと別れ、チェックインまでの2時間を潰すために駅前のシネコンで映画「必死剣鳥刺し」を観る。主人公トヨエツよりも吉川晃司の演技に魅かれた。
清潔なホテルに投宿、夕飯は道北の〆に寿司。天気がもう少し良ければサロベツ原野にでも足を伸ばすところだったのだが・・・

お約束の写真

寂寥感漂う商店街

7月28日(水)
ホテルでウダウダしてからオンボロの空港バスに乗り、12時発の便で羽田へ。市原上空から東京湾岸を飛んでいると、東京湾に白波が立っているのが見える。そしてスカイツリーがやけに目立つこと!
東京の殺人的な暑さに瞬殺された。

FCスキルアップミーティング

連休の18・19日、千葉の富浦でセタス・スパークル共催のスキルアップミーティングに参加してきた。

往路は京葉道路を使うが、早めだったので軽い渋滞で済んだ。
9時、すでにごった返している原岡キャンプ場でミーティングが始まる。
私のほかはスパークルのお客さんであるAさん、Yさん、紅一点のHさんの3名。
どんどん暑くなる中でカヤックを組み立てるが、新艇ウィスパーXPを購入してまもないHさんの組み立てが捗らないので少し手伝う。

風裏の大房岬近くまで漕いで、そこで練習開始。私はスカリングレストやロールの練習。師匠のカサハラ氏から、ロングロールが確実にできればひとまず十分というお言葉を頂いた。しかし、次にバックスイープロールもマスターしておくとよいと言われる。トライしてみるが、これが難しくすぐにはできそうもない。天地左右グチャグチャになってしまう。今後の課題としよう。

お昼は昨年から行きたかった板倉食堂へ。ラーメンを食べる。

午後は風の強い大房岬を回って館山湾側へ。南西風が強く風波が立つ中、TXレスキューをやってみる。スケッグはつけていなかったが、風波の中でもカサラノを操船でき、レスキューもまあうまくいった。


初日終了(左からカサラノ、K1、ウィスパーXP)

夜は館山市内で食事をし、夜遅くまで話し込んだ。夜のうちにYoshidaさんが到着。
Bajau Tripの赤塚さんも突然現れた。

翌朝、6時に目覚め朝の支度をしていたらすでにオオタガキさんがカフナを組み始めていた。これで全員勢ぞろいだ。しかしHさんが電車でひと足早く帰るというので、片づけを皆で手伝って見送る。

富士山も・・

朝のキャンプ場

その後中年男性(赤塚さんを除く)のみで昨日の練習場所へ行ってさまざまな練習。
二人一組でTXレスキューのタイムトライアルをやったが、みなおよそ1分30秒なので勝負はつかなかった。Yさんのフロートを使ったロールのエイドをしたり、リエントリーロールをやったり、水船になったら上陸して排水してまた手を変え品を替えて繰り返す。カサハラ氏のBICシットオンカヤックを漕いだり、リジッド艇でショートロールしたり(左のショートロールが復活した)、パドルフロートのみを使ったヒップフリックの練習をしたり、あげくの果てにはそこいらに落ちているカエルの顔のような浮きを使ったり、ゴミとして落ちている洗剤の空容器を使ったり、流木を使ってロールをやってみたりと(誰も成功はしなかったが)、ほとんど水遊びを楽しむ。動画は
こちら(ロールをしているのはYoshidaさん)。

TXレスキュー(その1)

TXレスキュー(その2)

二日続けて板倉食堂

BICでボート遊びする師匠たち

オオタガキ氏のSUP遊び

午後3時ころ、すでに多くの人が引き払った原岡キャンプ場へ漕いで戻り、撤収。
6時に富浦を出て、君津まで下道、その後渋滞が大幅に減ったアクアライン経由で自宅には8時着。

追記:今回リムグリップシーソックを一つ買い増し、カサラノのペダルをウィスパー用のフットプレートに交換した。もうおそらくラダーは使うことがなさそう(スケッグで代替)で、ペダルもどうせ固定するならよりしっかりと踏めてズレることがないものにしたかった。このプレート、もう少し長く漕いでみないと正確なところはわからないが、踏ん張りが利いて非常によい。今までペダルがついていたレール付きのパイプにループを引っかけ、カサハラ氏考案の調整テープで3番リブに取り付けると調整が容易である。写真はまた今度。近々、まだ残っているラダーワイヤーを取り去る予定。

スリリングな平日ツーリング

吐月工房氏とまたまたまた平日に三浦南岸で漕いできた。

朝5時過ぎに出発。横横道路の横須賀PAでゆっくりトイレ&朝食。PAを出る頃にポツポツ雨が降ってきた。

下道に降りてみると路面が結構濡れている。このまま降るとイヤだなあと思いつつ、小止みになったので少し安心。7時に宮川駐車場に到着するが、アスファルトが濡れている。まもなく吐月工房氏が到着し、私は組み立てに入る。30分で組み上がり、7時50分出艇。

出発

風はないが、少し高目のうねりが入っており、引き潮なのでブーマーがところどころに立っている。三浦南岸は浅いところに根がたくさんあって、ブーマーが出やすいところだ。

うねりを越えつつ安房崎から時計回りに城ケ島一周へ。安房崎から城ケ島南岸はブーマーの巣窟と化していた。いつもより少し陸から離れて漕ぎ、ブーマーを避けてすましと海岸へ。ゴミ拾いをして、ペットボトルを中心にゴミ袋2つ拾う。平日早朝なので海岸を歩く人もいない。

引き潮のすましと海岸

再出艇したら、岩の根っこに青くてきれいなウミウシを発見。
アオウミウシ?

その後、長津呂崎そばの3重ブーマーの間を縫いながら三崎港に入る。風がないので安心だが、ブーマーとブーマーの間はスリリングでちょっと緊張する。こんな状況でもスケッグ仕様のカサラノを操れるようになってきたのは嬉しい。

海面泡だらけ

三崎港を抜け、トット島経由で宮川に戻る。まだ9時台だ。お約束のロールをはじめる。まずスカリングレストからスカリングロール、次いで持ち替えのロングロール、ストームロールっぽいロングロールも成功した。その後は失敗と成功がないまぜになるが、沈脱することなく持ち替えロングロールでリカバリーできた。持ち替えロングに関しては成功率が100%になった。一つのロールができれば、バックアップ用として使えるのでいろんなロールにトライできる。これも吐月工房氏のコーチングのおかげである。ありがたいことである。10時過ぎに終了。

その後吐月工房氏は午前中に帰路につき、私はカサラノの船体内部に入った水を出しきって、撤収。湿度が高いので船体布が乾かないため、適当なところで仕舞う。最近ラダーを全く使わなくなったので、フットペダルをウィスパー用の1枚プレートに替えようと思っているのだが、まだ手元にはない。フットペダルの固定用ネジの回転が渋いので、マリン用の潤滑剤6−66を吹いておく。

次いで、カフナのバッグをとりだし、今から10日ほど後から始まる夏の北海道遠征のため宅配便にすぐ出せるよう、中身の点検。こちらもフットペダルのネジに潤滑剤を吹いておく。北海道遠征といっても海に関しては連日漕ぐような大げさなものではなく、礼文島西岸の単独ワンデイツーリングだが、風の状況によっては全く漕げないこともありうる。まして単独だし・・バスでの移動やカヤック部品以外の荷物を詰め込んで送るため、今回のフネはカフナである。パドルも平パドル(コーモラント)の予定。クラトワを持っていきたいところではあるが、今回の北海道行きはカヤックのためだけではなく、嵩張るのと、海水温が低いのでリングがついていないと手が冷たくてたまらないだろうと思われるので却下した。パックカートを取り付けて完了。

一人「まるよし食堂」でお昼を食べ、帰路につく。次第に雨が降ってきて、東京に着いても雨だった。