パドリング代は320円

カサラノにスケッグをつけて少し長く漕ぐつもりで6時30分にに家を出た。
京葉道路が瞬く間に渋滞し始め、穴川の渋滞が3kmほど。いい天気だからプレGWで皆さん繰り出しているようだ。と、千葉東ジャンクション近くで事故渋滞。自損とおぼしき事故車に乗っていたおじさんたちのゴルフバッグ4セットがとても虚しかった。

予定より20分遅れで8時30分に保田中央海岸着。カサラノを組み始める。順調に組めて要したのは30分ほど。9時過ぎに組み上がるが、その後着替えたりトイレに行ったりカヤックの3ウェイバッグを積み込んだりSTOWBOARDを積み込んだりしたら結局出艇は9時50分になってしまった。若干北西風が強めか。海上に出たら常に右横から波と風が来る状態で、浮島までその状態が続いた。風速は4〜5mくらいだろう。

風は残念ながら写らない・・

スケッグの調子が非常にいい。このくらいの風でもカサラノは斜め後方からの風でウェザーコッキングしやすいのだが、スケッグをつけるとだいぶ抑えられる。フォワードストロークに専念できるのがいいし、リーンすればそれなりに進路が変わる。この日は終始スケッグのありがたさを実感した。

浮島の沖側には回らずに東側を漕いでいたら、勝山沿岸でカヤックフィッシングのおじさんと普通のリジッドカヤックのおじさんに遭遇。少し会話を交わす。リジッドのおじさんに館山まで行くつもり、と告げたら、今日は館山の開港祭りで「にっぽん丸」が停泊しているという。それは人が多いということかもしれないと思ったが、ぜひ「にっぽん丸」を見てみたい衝動にも駆られる。

浮島

岩井海岸は沖合からまっすぐパスして南無谷海岸のソルティーズ前に11時40分上陸。少しはカヤッカーがいるのかと思いきや、カヤックのカの字もなかった。たぶん南無谷に着く少し前の海岸に上陸していたシットオントップ数艇がそうなのだろう。一人寂しくパンを噛る。

本当は昨年行かれなかった「板倉食堂」へ行ってみたかったのだが、食堂のある湾奥に入ると出てくるのが面倒くさいし、一人抜け駆けせず、ぜひ友人たちと来てみたいのでおあずけとする。

12時15分、再出艇。南無谷から直線的に太房岬先端をかすめ、館山湾に入る。那古船形で止めようかとも思っていたが、遠くに「にっぽん丸」が見えたので斜めに館山湾を縦断する。太房岬をまわる頃から南西風が強く吹き始め、また右横方向からの波と風である。漕いでも漕いでも「にっぽん丸」は近づかず、陸も近づかないのでうんざりしてくる。
「にっぽん丸」に最接近してみようかとも思ったが、海上保安庁の船が激しく航跡を立てて行ったのでその瞬間にやる気が失せた。最接近して保安庁にグダグダ言われるのも癪だし。

それにしても「にっぽん丸」がどのように停泊しているのか、桟橋なんてあったっけ?と思ったのだが、帰って調べたら
新しい桟橋ができたようだ。

ということで北条海岸に14時10分着。およそ20kmくらいで大した距離ではないと思うが、久しぶりに漕いだ距離なので疲れた。それにしてもスケッグを買ったのは正解だった。

片づけている間、
「これはKライト?」と尋ねてきたオジサンがいた。「いいえ、カサラノですが、よくフェザーの艇種をご存じですね」と言ったら、Kライトを2艇持っているという。それならカサラノのシェイプをKライトと間違えるはずはないと思うが・・ちょっと怪しいなと思ったら、案の定「あーあ、カヤック持ってくればよかった」だって。せっかく持っていてそう思うのなら、こんないい日に漕がない手はないではないか。負け惜しみを言っているオジサン、おそらくここ何年も漕いでいないに違いない。そのうちカサラノの内部を見て、キールフレームがベルクロ止めになっているのは私が自作改造したのをフェザークラフトの社長が「これはいい」とアイディアを使ったんだ、などと自慢話。ホーラ来た、はいそうですか、それはエライね。でも漕いでない人にそんな自慢話されても別になんとも思わんよ、と心の中でつぶやく。この手のオジサンは結構いる。また、この手の話をするオジサンに限って普段漕いでいない。悲しいかなフェザークラフトは押入れの肥やしと化しているに違いない。

STOWBOARDにカサラノを乗せて駅に向かう。やはりスケボーに乗せるのは快適である。しかしちょっと予感がしていたのだが、やっぱり列車はすんでのところで乗れなかった。50分待ち。16時03分の千葉行き各停に乗って16時30分保田着。17時近くになって帰路につく。今日の電車賃は320円。300円台になったのは久しぶりかもしれない。でも、約半日のパドリングでの消費カロリーを一般的な食品の値段にしたら、絶対300円以上だろう。

渋滞情報を確認したらものすごい渋滞。アクアラインは全線、京葉道路もいつもの千葉東JCT前後と幕張近辺で渋滞しているが、そのうち2ヶ所の渋滞がつながって20km超の大渋滞に発展した。都心に向かう各高速道路もすごい渋滞だ。やっぱりプレGWなのかも?

そこで、ナビ子の指示通り蘇我で高速を降り、千葉市内を走って東関東道湾岸習志野から湾岸市川まで一区間乗り、市川から今井橋を通って帰宅するルートへ。そこそこの渋滞(稲毛あたり)にはハマるが、大渋滞に巻き込まれることなく、無事19時30分自宅着。

初夏のような内房沿岸・新装備のインプレッション

セタス今年初めてのBKP(バックカヤックパッキング)ツーリングとして、内房の保田海岸から上総湊まで北上した。

試してみたいカヤックパックの運搬方法があったので、気合が入れば房総まで電車で向かおうと思っていたが、結局車で向かってしまった。そして、カメラを忘れてしまった。画像はこのエントリにはない(その後オオタガキ氏から写真を頂き、使わせていただきました)。

集合してみると新旧フェザークラフトユーザーが11名。関東にもこんなにユーザーがいたとは!普段一緒に漕いでいるYoshidaさん(K1&カフナユーザー)、昨年秋に内房・外房プライベートツーリングでご一緒したオオタガキさん(カフナユーザー)も一緒であり、久しぶりにお会いするパワーパドラーのサトウさん(カフナユーザー)ともお会いできた。特にオオタガキさんは年末から体調を崩されて入院生活を送って後の復活ツーリングである。再びご一緒できたことが何より嬉しい。

いつになく多い参加者

カヤックが多いと壮観です

竹岡の白狐川の桜

さすがにカサハラ氏を含めて12艇でのツーリングとなるとそれなりに出艇までに時間もかかる。今回は帰りに電車を使うので重量の軽いカフナを組み立てたが、スターンセクションのデッキバーが経年使用で外れてしまっていた。カサハラ氏がその場でワッシャを噛ませて修理してくれた。そして、今回は新しい
ダブルコーティングのシーソックを試しに使わせていただく。ゴワゴワ感が強いが、ペダルを踏む感覚が大きく変わったようにも思えなかった(ただし、ラダーをつけて操作していたわけではない)。耐久性が増したとのことで、それを取るか、価格を取るか、難しい選択になりそうだ。

さらに、今日のカフナにはカサラノ用に購入した
スケッグを装着してラダーなしで漕いでみた。きちんと装着すれば海藻の上を何度も通過してもズレることはなかったし、追い風や斜め後方からの風に対してウェザーコッキングが抑えられ、大変使い勝手はよさそうだ。リーンすればそれなりに進路が変わる。次回カサラノで使用してみて、もう少し詳細に体感してみたいと思う。良さそうなら今年はカサラノにはスケッグでなるべく漕いでみたい。

さて、撤収してから駅までのでかいパックの運搬方法である。カフナ(16Kg)くらいの重量ならいわゆる
ストロングスタイル(背負い)が一番早いのだが、今回は折り畳み式のスケートボード(STOWBOARDを潜ませてきた。折り畳めばフェザークラフトのカヤックパックの外ポケットにピッタリ入るサイズである。重量は3kg弱。耐荷重は90kg。折り畳みカヤックに折り畳みスケートボード。いいコンビではないか。


STOWBOARDにパックカートを乗せて上総湊駅へ。脇にさしたクラトワで舵取り。
パドルに引っかかっているレジ袋はツーリング中の獲物(海上のゴミ)

結論としては運搬の補助には十分なる。パックを乗せて平坦なアスファルト上を押す分には、純正パックカートなどよりも滑りがいい。緩い下り坂だと相当早足で歩かないとボードとパックが先行してしまうくらい。ただ、スケートボード上にパックをしっかり据え付けるのが大変であり、今回のようにパックを縦にしてただ乗せて押し歩くだけでは、パックの中の船体布やフレームがだんだんとズレてきてバランスが崩れ、カーブなどを曲がりにくい。また踏切などでレールの間にタイヤがはまることもあり、段差に対して強いわけでもない。もう少しボードへの乗せ方を工夫すれば、階段以外の場所で十分役立ちそうだ。

結局上総湊駅で乗った電車は17時15分。今までになく遅い電車だ。しかし日も延びたのでまだ明るい。保田海岸で皆さんに挨拶して、帰路につく。アクアラインはトンネル部分が渋滞して通過に30分以上かかるようだ。館山道・京葉道路を千葉まで走り、東関東自動車道経由で19時30分帰宅。何とか1時間30分で帰ってこれた。

2010年初漕ぎ・三浦南岸

4月に至って初漕ぎである。本当は冬の間も1ヶ月に1度くらいは漕ぎたかったのだが、いろんな事情で結局4月になってしまった。まあいつものパターンだ。

朝が冷え込むとのことでいつもよりゆっくり目に出発。しかし1時間ちょっとで宮川に到着。吐月工房氏と高速で抜いていったU氏がすでに到着。

フォールディングは私一人なので待たせないように組み始める。今回はいきなりカサラノ。あまり手順を忘れていなかったので(いくら何でもそろそろ覚えます)、船体布が縮んでいてちょっと組みにくかったが順調に組み上がる。しかし組み上がってみたら少々バウがねじ曲がっていたようだ。常にカヤックの前方は視界に入るので、きれいに組み上がっていないと気持ち悪いが、曲がったら曲がったなりに漕げばいいので問題はない。

久しぶりのカヤックだ

天気予報では午前中は晴れとのことだったが、意外と雲が取れず、曇天のツーリングだ。
宮川からいつものように城ケ島まで横断して、時計回りに城ケ島をめぐる。城ケ島までは追い風と横波で艇のコントロールがしにくい。久しぶりのカサラノなので、お尻でバランスをとっていく特有の動きにまだ慣れていなくて、横断途中から安房崎までラダーを出す。

安房崎を回ると風裏になってきて、やや漕ぎやすくなってきた。すましと海岸に上陸してゴミ拾い。テントが数張あり、キャンパーがくつろいでいる。ペットボトルを中心に拾う。

海鳥がいっぱい

U氏も今年初漕ぎ



ゴミ拾い

長津呂崎を回って諸磯まで行こうかという話に一時はなったが、城ケ島を回り込んだら風が冷たく、向かい風の中頑張る気力もないので止める。三崎港の中もしばらくは風が回り込んできている。クラトワパドルを素手で握っているが、濡れた手が風に晒され冷たい。それでもリーンさせていく感じは少し取り戻した。こういう冷たい水で沈するのだけは避けたい。ロールも3ヶ月やってないし・・

それでは宮川をスルーして横瀬島まで行くか、という話も出かかったがやはり風が冷たいので止める。無理はしない、無理はしない。11時過ぎに宮川に戻り、片づけ、撤収。今日は船体の中に水が浸入しなかったので片づけもテキパキと。空気が乾燥していて風もあるので乾かす時間を取らなくても片づく。

12時過ぎにすべて片づいて、まるよし食堂でお昼の定食を食べて13時過ぎに帰路につく。いつもより交通量は多かったようだが、渋滞なく順調に帰宅。

来週11日は久しぶりに房総(内房)のセタスBKPツーリングへ行く予定。

幕営のお供に携帯ラジオ

私はテレビ世代なのでテレビもよく見るが、実はラジオ好きである。
学生のころはラジオなしには生きて行かれなかったし、今でも自宅で仕事する時は、J−WAVEをかけっぱなしでながら仕事をする。若者世代の携帯電話に相当する物が私にとってはラジオか・・?

いま巷で大流行、猫も杓子も持っているiPodはまだMac専用機だった頃初期型(5GB)をいち早く買って使っていたし、その後もう1台買い足したりしたが、ここ3年くらいとんと聞かなくなった。結局自分の持っているCDが尽きればいくら転送しても飽きが来る。iTunesのストアで曲をダウンロード購入したこともあるが、なぜか長続きはしない。
ラジオの方が新しい曲や古い曲も取り混ぜて放送してくれるから飽きが来ないし、トークが意外な発見を与えてくれたりする。通勤用のかばんの中に小型ラジオは常に忍ばせている。

そういうことで結局ラジオに帰ってくる。車を運転している時も基本はJ−WAVE。長野県の中野市から信濃町にかけてJ−WAVEがしっかり入る地域があることも知っている。関東ではたまにbayFMを聞いたり、インターFMを聞いたりするし、スキーで群馬や長野へ移動した時はFM群馬やFM長野だ。すでにカーラジオにはプリセットしてあったりする。また、深夜FMが面白くなくなるとNHK第一放送。移動しながら周波数をあまりいじらなくて済むのがいい。

ラジオのありがたみを一番感じるのはテント泊の時だ。先日の神津島のキャンプ地でも寝しなと早朝にNHK第一を聞いていた。夏、仕事山行で縦走中に大相撲名古屋場所を聞くのも楽しみ。気象通報を聞いて天気図を書くことは自分はしないが、夕方の地方ニュースで詳細な天気予報をやってくれるのは助かっている。

今まで登山などへ持っていった携帯ラジオにだいぶガタが来た。パナソニックのもので、FMステレオ受信ができるのでイヤホンが2つ。シンセチューニング(選局プリセット型)のラジオで重宝していたが、もうスピーカーから音は出なくなって久しく、巻き取り式のインナーイヤホンの片方は銅線がむき出しになり、ついにFMとAMを切り替えるジョグダイヤルがおかしくなってきた。神津島ではAMしか入らなかったので問題なかったが、帰りの船のデッキでJ−WAVEの「グルーブライン」を聞こうと思ってなかなかうまくバンドが切り替えられなかった。

もうそろそろ新しい携帯ラジオを買おうと思った。特段高い買い物ではない。しかし、いつもの癖で研究してしまう。受信感度(これが一番大切)への信頼という面では、ソニーやパナソニックの大手メーカーの方が信頼が置けそうだ。慣れてしまったのでアナログチューニングよりシンセチューニングの方がいい。移動先でエリアコードを変更するだけで選局の苦労がなくなる。短波は必要なし。テレビ音声は入ったほうがいいが、どうせあと1年ほどでアナログ放送はなくなるから無用になる。イヤホン内蔵型でもいいが、そこからまず壊れてくるのでこだわらない。なるべく小型で電池の持ち時間が長い物・・と考えてきた。

かなり逡巡したのち、
携帯ラジオでもカーラジオのようにオートチューニングができれば、県境の山などでもプリセットを変更せずに信号の強い局を探すことができるなあと思った。北アルプスや南アルプスではどちらの県の局も入るので、いちいちプリセットを変更するのはかえって面倒くさい。FMもAMもオートチューニングできる機種はソニーに1種類しかない。これで決まり、である。イヤホン内蔵型ではないが、好みのイヤホンで聴くことができる。曲のプリセットも手動で25局できる。

実はソニーからは「山ラジオ」という機種が出ている。平地のエリア別プリセットがあるほか、山域別のプリセットがあるタイプで、他には見られない。だが、専用プリセットされていても入らない場所では入らない物だし、値段が高い割に他の通勤用ラジオをなんら変わるところがなく、付属するケースがやたらでかい。あまりにベタなネーミングなのもちょっとね・・・ということで選択肢から外した。

←これ買いました

←「山ラジオ」。こっちの方が普通はそそる。

で、買ってきた。5,000円程度だった。素材がプラスチックで質感は全然ない。厚みも大きさも今まで持っていたラジオより一回り大きい。
はっきり言って安っぽい&ダサい。でも失敗ではなかっただろう。倍くらいの値段がするより薄型小型の通勤用携帯ラジオだって、作りは安っぽいのだ。付属のイヤホンはあまり耳に合わないようなので、カナル型のイヤホンを使う。東京で聞いている限りは感度のよさ悪さはわからないのだが、今度辺鄙なところへ持っていって試してみようと思う。

ちなみに、このくらい小さなラジオだったら本体に防滴処理がされていなくても、ジップロックに入れれば防水になる。

追記:私が買ったラジオにはオートオフ機構がついていませんでした。チューニングシステムからてっきりオートオフはついているものと思い込んでいましたが、これでは聞きながら寝入ってしまってもスイッチはオフにならない。うーむ、一長一短だなぁ・・

神津島に雪が降るのだ3

31日、出港時間は10時30分なのに、若人たちから6時にたたき起こされる。テキパキ撤収すれば8時起床でも何とかなりそうなものだが・・

で、配給された朝食はバウムクーヘン1かけら。こういうことはよくあるが、それにしてもトホホである。事前の計画メニューではちらし寿司だったのに・・個人持ちのチョコレートを足して、インスタントコーヒーを淹れ、腹に流し込む。今回は日程が短いし、もう帰るだけなので何とかなるが、縦走の多い夏にこのレベルの食事ではカロリー不足でシャリバテしてしまう。

西風が強めなので「かめりあ丸」が到着する場所が変わると嫌だなあと思っていたが、8時、キャンプサイトにも鳴り響く島内放送で前浜海岸から出港とアナウンスがあった。いちいち東海汽船に問い合わせなくても定時にわかるのはありがたい。

予定通り「かめりあ丸」は10時に神津島着岸、10時30分には出港。全くのピストン運行なのである。東京での停泊時間も3時間弱だから、船員の方々はさぞ多忙だと思う。



さらば神津島


日中の航行なので、アイランドホッピングをデッキから楽しむことができる。式根島では学校の先生らしき方の転任に伴う見送り風景が見られた。こういう風景を見ると船旅っていいなとあらためて思う。



夕方、東京湾に入る頃デッキに出てみる。右舷方向に房総半島南部、左舷方向に城ケ島や三浦半島南岸が見えてきて、いつもカヤックから見慣れた風景があらわれ、何だか安心する。しかし大房岬沖を通るあたりから明らかに水が褐色を帯びてきた。いつもきれいだと思っている房総南部の海水にしてこの色である。外洋の海水がいかにきれいなことか。

そんな海にデッキからタバコの吸い殻を捨てるオッサンがいた。思わず「灰皿はすぐそこにあるだろう!」と怒鳴ってしまった。本当に船内の喫煙所と目と鼻の先なのである。オッサンはきょとんとしていた。きっと普段から吸い殻を海に捨てているんだろう。自分くらいどうってことなかろうという意識に違いない。デッキのフェンスから海にたたき込みたいくらいだ。しかし、同じようなことをするオッサンが多いらしく、別のオッサンもすぐそばでタバコをふかしていたのだが、ついぞ灰皿に吸い殻を捨てる場面は見なかった。捨てる瞬間を見ていないと注意もできないし、ずっと監視している訳にも行かないのでその場を離れた。こいつらには良心とか、規矩というものはないのだろうか。

富津岬沖の第一海堡、第二海堡(工事中)を間近に眺め、横浜のビルのシルエットとベイブリッジが見える。アクアラインの「海ほたる」を右手に、トンネル部分の空気抜きである「風の塔」を左手に見るころには羽田からの飛行機が四方に散っていくのが見え、日が落ちるとお台場脇をすり抜け、レインボーブリッジをくぐり、竹芝桟橋到着である。都会のど真ん中に着岸するのはドラマチックではあるが、何と東京は光に満ちあふれているのか。同じ都内の神津島の暗闇のキャンプ場からのギャップが著しすぎる。

横浜

「風の塔」と富士山

神津島に雪が降るのだ2

29日夕方からの降雨と風で異様に寒く、夜中に何度も目覚めた。3季用薄手ダウンシュラフとシュラフカバーではしんどい寒さ。しかし、翌30日朝は予報通り快晴である。

標高570mの天上山トレッキングに出かける。標高0mからの登山なので、高尾山に登るのとはちょっと違う。前浜に面した集落まで来たら、天上山の上部が白い。若人たちは天上山特有の砂礫だと寝ぼけたことを言っているが、それは前日よく山を見ていないからだ。昨晩の冷たい雨はもしやと思っていたが、島民でも滅多に見ないという雪の中の登山となった。

白いのは雪


標高300mあたりからわずかに雪が出てきた。稜線直下では5cmくらいか。10合目まで達すると強風なので、千代が池まで降って風をしのぐ。表砂漠と言われる砂礫地ではグレーの砂礫と白い雪のコントラストが面白い。雪の上から足で踏むと、きな粉と砂糖をまぶしたような感じだ。

9合目あたり

山頂部に千代が池

枯山水のよう


「新東京百景展望地」からは伊豆諸島北部の島々が一列に並ぶ姿が見える。手前から式根島、新島、利島、大島。大島の三原山山頂部も当然白く、遠く富士山やうっすら見える南アルプスも白い。伊豆半島の低山で際立って白く見えるのは大室山だろうか。山腹が樹林帯ならばわずかな積雪で白くはならないが、大室山は草地だから、真っ白になるはずである。



東南方向には三宅島。これもまた雄山から噴煙を上げつつも山頂部は白い。そしてその南方には御蔵島。こんな絶景を東京都民は見ない手はない。

三宅島も山頂部が白い


標柱に雪がべっとり

山頂からの神津島集落中心部

降りは別ルートから下山。階段降りだが、だんだん右ヒザが痛くなってきた。以前から右ヒザは降りで痛いことがあったが、ここ2〜3年痛みは引いていた。ここのところバカのようにスケートをやり始めたことや、右ヒザを氷で打ったことが直接の原因であろう。スキーもあまりヒザにはよくないし(ただ登山よりは負担は軽い)、前日アスファルト上を延々歩いたのもよくなかった。若人たちは先行させて、マイペースで下山。

若人たちから支給される食事があまりに貧弱なので、集落で野菜炒め定食を食べた。午後はテントで読書&昼寝。夕食は若人らしく焼き肉ということだが、私は肉は遠慮したい。しかしご飯が炊けてまず肉から焼き始めた上、野菜は肉が焼けてから切り始める始末だったので、結局豚焼き肉とタレでご飯が終わってしまい、寒い中野菜が焼けるまで待つのも面倒くさく、早々にテント内へ。明日は帰れる。

つづく

神津島に雪が降るのだ1

春の仕事(山行)は離島が多い。とはいえ、遠い所は日程的にも難しく、東日本にはこの時期快適にキャンプできる離島は少ないので、自然と伊豆七島のどれかになる。東京に住んでいても残念ながら普段意識することがないのだが、大島以南の伊豆諸島および小笠原諸島は東京都内である。

その中でも、島内に登り甲斐のある比較的高い山があるのは、神津島と八丈島。八丈は3年ほど前に行ったから、久しぶりに神津島行きとなった。

28日日曜日夜22時発の東海汽船「かめりあ丸」に竹芝桟橋から乗船。都会の中心から島渡りができるのは東京ではここだけで、行き先はすべて伊豆七島。今回は若人と同じ2等和室ではなく、私一人だけ特2等(寝台)にした。料金格差は船の装備(かめりあ丸は率直に言ってかなり年季が入っている上、食事事情やアメニティに乏しい)に見あっていないのだが、プライバシーは一応保てる。何せ往路は羽田沖で時間稼ぎをするので、大島までも8時間、神津島までは12時間かかる。プライバシーくらいは保ちたい。指定された寝台は2段になっているベッドの上段で、はしごの上り下りが面倒くさい上、船内暖房が効きすぎて室温が25度以上になっていた。備え付けの毛布を敷布団にしてもう1枚有料(100円)の貸し毛布を借りたのだが、貸し毛布を使う必要は全くなかった。

翌朝、大島到着のアナウンスでたたき起こされ、その後はゴロゴロしながら神津島到着を待つ。幸いなことに船の揺れは少ないまま、利島、新島、式根島に立ち寄って神津島前浜埠頭に到着。前回は風波の関係で島の東側の多幸湾に到着したため、生活道具の入った大型ザックを背負って丘越えしてこなくてはならなかったので、ほっと胸をなで下ろす。ここからなら沢尻海岸のキャンプサイトまで歩いて15分だ。埠頭にある「よっちゃーれセンター」(この建物も最近できたようだ)の観光協会でキャンプの手続きをして、総勢11名、ぞろぞろと海岸沿いの道路を歩く。若人の中には数年前の沢尻海岸キャンプを経験したものはいないので、何となく私が案内役になってしまう。

ついたキャンプサイトは夏は海水浴場になる入り江に面していて、海水は透明度が高い。サイトは草地で炊事棟と水洗トイレ棟(夏季はシャワーあり)があって最高のロケーションである。山側にはずっと以前に営業をやめて廃虚となったリゾートホテルの虚しい建物があるが、新しい老人ホームの建物もあり、トンネルを抜けると島内唯一の温泉保養センターもある。しかし我々が滞在していた期間は年度末のため、保養センターは閉館していた。ヒマで仕方なければ保養センターの風呂に入って時間を潰す、ということもできない。

沢尻湾


テント設営。今回も個人テントを持参してきた。今回は友人の遺品のBDファーストライトを使ってみたかったが、雨のことを考えるとやはり前室が欲しいので、今回はいつものエアライズ2を持ってきた。もう10年以上使っているはずだが、このテントは面白みや所有満足感は全くないかわり、実に丈夫なテントだ。キャンプ道具を詰め込んできたザックは、友人の遺品であるグレゴリーのパリセード。旧型のパリセードは持っているが、新型のパリセードの使い心地はどうかの調査も兼ねている。結論は当然ながら旧型よりも優秀。細かい工夫がなされている。まず、雨蓋が取り外せてウエストバッグになる所は旧型と同じだが、ファスナーの形状が一直線になって落とし物が無くなった。ショルダーハーネスがグレードアップし、チェストハーネスが可動式になっていた。ウエストベルトの両サイドに小物が入るポケット。背面のアイゼンなどを入れる薄いポケットの中にもう一つファスナーがあってそこからザック本体の中身にアクセス可能。旧型ではナルゲンボトルを装着できるスロットがザック脇にあったが、新型ではこれが格納できるようになっている・・・などなど。私はマイテントを担いで山行するスタイルが多いので、80リットルクラスのザックは欲しいのだが、友人から受け取ったアウトドアグッズの中でこのパリセードが最高に優れものである。

前浜海岸


この日の昼食は歩いて港まで戻り、「まっちゃーれセンター」2階の食堂で刺身定食を食べる。結局これが島に来て唯一の海産物を口にした食事だった。

刺身定食


食後はテントサイトを通過して島の北端近くまで道路を歩く。距離にして4kmくらいだが、海岸の様子を眺めながら1時間ちょっとの散歩である。西に突き出た岬を回るたびに強風に晒される。赤崎という磯場に遊歩道があって、観光パンフレットの表紙にもなっている。夏はさぞや楽しい海中プールだろうとは思うが、強風の春先では寂寥感が強いだけ。

赤崎から式根、新島を眺める


帰りはありがたくも自家用車に乗せてくださる方がいて、あっという間にキャンプサイトに戻ってきた。

夕方から冷たい雨。ラジオでは東名高速御殿場あたりでの降雪で大渋滞、箱根あたりの有料道路が軒並み閉鎖と言っていた。テントの中もかなり寒い。

つづく