バイク免許の幅を拡大

年始からの緊急事態宣言をある程度真面目に受け入れていたので、遠出が憚られた。本来は感染リスクが最も低い活動であるバックカントリースキーもずっと自粛していた。そうこうしているうちに月日は過ぎていく。

なんだかもったいないので、1月末に近くの自動車教習所の門をたたいた。大型自動二輪免許を取得したいと思ったのだ。

今からちょうど30年前、試験場で一発試験による「限定解除」しか400ccオーバーのバイクに乗れなかった頃、鮫洲試験場で3回か4回ほどチャレンジしたことがある。練馬にあった「都民自動車教習所」に入所してひと夏大型二輪の練習をみっちりやった上でのトライだった。しかし試験場では完走させてもらえず、走り出してまもなく「検定中止」となることが重なった。「検定中止」の理由もちゃんと教えてくれなかったような気がする。頻繁に試験を受けることは許されておらず、ある程度間隔を置いて受検予約をしなくてはならず、その間の時間がもったいなくなった。すでに就職して3年ほど経っていたし家族も増えて、平日をこのために空けることが難しくなったこともあきらめた理由だった。

「限定解除」の制度が生みだされたこと、「落とすための検定」として「限定解除」を導入し、大きな意味もなく受検者を不合格にしてきたこと、受検機会が限られていたことなどを当時は恨んでいた(この試験の合格率は非常に低かった)。当時の「限定解除」について面白おかしく書かれた
こちらのページを参照あれ。

仮に「限定解除」ができたとしても、当時の日本国内の販売ルートでは750ccが上限だったし、オフロードバイクに好んで乗っていた自分にとっては、オンロードバイクの750ccのラインナップ(この時代の名車が揃っている)の中にどうしても乗りたいあこがれのバイクがあったわけではなく、逆輸入のホンダXR600(要するに大陸の砂漠地帯でラリーに用いられるバイク)に乗ってみたかっただけだった。もちろん、当時は今流行の「アドベンチャータイプ」なんぞはないし、輸入車もハーレーやBMW以外は販売チャネルがかなり限定されていた。

その後5年ほどして、自動二輪の免許制度は大型自動二輪免許が教習所で取得できるようになった(ハーレーなどからの外圧による「規制緩和」の一つ)のだが、最初は教習所も少なめ。さらに3年ほどしてからやむを得ない理由でバイクから降りたので、大型自動二輪免許は不要のものになった。

コロナの影響で、昨年初夏から18年ぶりにリターンして250ccのカワサキ・エストレヤに毎日乗っている。都内の道路で通勤に使うにはこれ以上ふさわしいバイクはないと思う。アンダーパワーだが、美しく磨き甲斐があり、燃費も都内でリッター28km。

だが郊外をツーリングするにはもう少しパワーが欲しくなってくるし、遠距離ツーリングではパワーに余裕を持って高速道路も使ってみたい。大型バイクの多くは趣味性の高いモデルが多く、ほとんど興味が湧かないが、エストレヤの親分のようなW800と、各社の650ccノンカウルバイク(CB650、XSR700、SV650)には興味を持った。実用域でのバランスがとれていそうで、下道(県道・市町村道・舗装林道レベルまで)を安全に楽しく走り、高速道路での移動でも余裕がありそうだ。だんだん乗ってみたい気持ちが強くなってきて、ついに教習所の門をたたいてしまった。

1月末から3月にかけては教習所が最も混む時期ではあるが、早い申し込みの方が早く終わる可能性が高い。相談すると、2月は実技教習ができないが、3月初旬から半ばにかけて集中的に教習を受け、検定を受けるプログラムをあらかじめ組んでくれた(あらかじめ全教習予定を組むには若干の金額上乗せが必要)。普通自動二輪免許所持者の大型自動二輪免許取得の最短教習時間は12時間(学科はなし)。2時間連続の教習日も3日ほどある。3月はそれなりに忙しいが自由裁量の時間も増えるので、このスケジュールなら何とかこなせる。こればっかりは仕事の予定よりも教習の予定を優先し、仕事による直前キャンセルをしないようにして、3月を迎えた。

始めてみるとバイクの教習は実に楽しい。普段乗れない大型バイク(例に漏れず最近の教習車はホンダNC750)のパワーと強力なトルクを味わえるし、今どきの教習車は車重が軽く昔の400cc並に扱いやすい。初めの方では緊張して肩と腕に力が入ってしまって操作がぎこちなく、自分でもスラロームや一本橋、クランク走行などがうまくいかなかったが、最後の方ではある教官からそれを指摘されてずいぶん楽になった。絶対に失敗しない、という確信が持てるほどまで追い込んだわけではなくて検定も不安だらけだったが、12時間で見極めをもらい、検定日には何とか合格できた。あっけなく、教習をもう受けられないことが寂しくもあった。

コツは、自分の練習を信じ、上半身の力を抜いて「普段通りの走りに近づける」ことと、「課題の持ちタイムは気にしない」「失敗しても何とかなる」の3つだ。これらは教官から複数回言われることだ。私は「限定解除」のひどい印象が強すぎたので、「検定は落ちるもの」という原初イメージがなかなかぬぐえなかった。しかし実際の教習所での卒業検定は昔の「限定解除」に比べるとかなりまともで、ちゃんと実力を確認してもらえるものだ。

検定合格して肩の荷が下りた。トラウマも払拭できた。
4月に誕生日が来るので誕生日後に試験場に行って免許を書き換えようと最初は思っていたが、有効期限の長期化は二の次になり、検定翌日に試験場に行ってしまった。バイクの運転ではヘルメット&眼鏡がどうにも面倒で、「眼鏡等」の運転条件を外したかったこともある。試験場での手続きはあっけなく、そこまで混んでいなかったので1時間程度で終わった。

ただ、「更新」ではなく「併記」なので「更新」のように旧免許証に穴を空けて返還されず、新免許証の引換え券にそのまま貼られた旧免許証が召し上げられて返却されなかったのが腑に落ちない。旧免許証の期限がまだ3年ほど残っていることが最大の理由だとは思うが、個人情報てんこ盛りの免許証を本人の意向なしに穴も空けず試験場が引き取るのはおかしいのではないか?
少なくとも、本人の目の前で穴を空けるくらいのことはして欲しい。

新しい免許証はサイズがクレジットカードサイズに小さくなり、期限も西暦で書かれるようになった。前回の免許は、平成が30年で終了することが確定していたのに「平成35年まで有効」と書かれていて実に不愉快だった。

免許ゲット!これからしばらく試乗やレンタルで体験の幅を広げるつもり。