17東北巡業登山旅行(その3・鳥海山・祓川コース)

8月3日(木) 晴れ

ホテル宿泊にも関わらず、朝4時に目覚めてしまう。惰眠をむさぼるよりも朝食を摂って登山口まで早めに移動しよう。由利本荘市内から1時間30分かかって祓川ヒュッテ近くの登山口駐車場へ。ほぼ6時に到着して支度を始め、6時20分には出発。スマホから登山届けは出しているが、現地にも登山計画書と下山届があるのでこちらにも記載して登行開始。鳥海山は他の山よりも残雪が多いはずだが、ストックを持つかどうか悩む。車に積んであるストックはスキー用の伸縮ポールしかなく、雪渓では役に立つが、石突きにキャップがない。さらに七高山から新山へ向かい戻るとき、それほど短くなるわけではないので邪魔になりそう。結局、いつものようにノーストックで雪渓を登ることにした。
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祓川登山口に向かう途中から秀麗な鳥海山

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祓川駐車場から

祓川ヒュッテを抜け、竜ヶ原湿原を抜けて、登山路に入る。6年前の震災のあった年の夏、仕事山行でここまで来たにもかかわらず、
悪天候と少年たちの道迷いで敗退を余儀なくされた登山路である。

いきなり雪渓歩きから始まり、七ツ釜避難小屋までの登山路前半だけでも3ヵ所くらい長い雪渓を歩くことになった。今年はかなり残雪が多い。スキーを担ぐ体力と汚れた雪面滑走を厭わなければ、十分スキーができそうである。避難小屋を越えて康ケルンで休息し(7時30分)、前後して歩いてきた単独登山者と声をかわした。うち一人の方が康新道を登るとおっしゃるので、私もそちらのルートで登ることにした。もう一人の単独登山者は雪渓の際でコンパクトカメラと水筒を雪渓深くに落としてしまい、往生していた。ストックで手が届く距離ではないので、諦めざるを得ない。私も他山の石としてスマホなどを落とさないように注意することにした。
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いきなり雪渓登り
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近づくとかなり急である

康新道への分岐がわかりにくい。特に雪渓に入ってすぐに直登するコース取りは分かりにくいようで、登路に康新道を選ぶ登山者は少なかったようだ。先行する単独登山者に追いつき、彼の方が鳥海山には慣れているので同行させてもらう。だいぶ年上には見えるが、高校時代に山岳部に属していた地元の方で、リタイア後に登山を楽しんでいるらしい。腰に蚊取り線香を引っかけ、毎歩「よいしょっと」と小声を出しながら登るスタイルが彼の独特なスタイルだ。康新道は鳥海山北面の崩壊地(崖)の際を縫っていて、崩壊地の中には分厚い残雪が氷河のように見えるし、登山道周辺にはお花畑が広がって気持ちがいい。
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康新道の途中からしだいに急になってくる
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新山北面の残雪はものすごく分厚い

同行させてもらった方の話によれば、鳥海山は山形県の山のように思われていて、登山客の大半は西側の鉾立コースか、南側の滝の小屋コースから登ってくるが、鳥海山の山頂を常に見上げながら登れるのは祓川コースなので、最近はいつもこちらから登っている、という。
何となくわかる。前日の夕方、鳥海山を由利本荘市の北部から眺めたり、朝祓川まで移動してくる間、ずっと見えていた鳥海山の北面はとても美しい。個人的には山形側から見た鳥海山より秋田側から見たそれの方が「秋田おばこ」と言ってよく、身震いがするほど美しいと思う。

しかし登山路はしだいに急登になる。多くの山は山頂に近づくにつれて斜度が緩む傾向にあるが、鳥海山の七高山まではザレた急登がつづき、しかも登った跡があちこちに見られてガスった時は見分けにくい。この日は晴れていて、錆びた鎖を目安に進んだが、それでも間違いそうになる。9時55分、七高山山頂到着。同行させて頂いた秋田の方にお礼を述べて、10時に新山に向かった。
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七高山から新山。ここにも残雪がべっちょり

中央火口丘の新山までは一度火口部に降りて、再び登り返す必要がある。火口部に降りる下降路が急でザレていて落石を誘発しやすそうなので慎重に降りる。そこから残雪をトラバースして登り、岩だらけの山頂部に取りつく。雪慣れていないと滑落しそうな場所だが、ヘルメットもアイゼンもなしで急な雪面を登ろうとするトレラン者がいたり、ルートを無視して雪上を歩く不届き者がいる。雪慣れていないのにそんなところを歩くのは止めて頂きたい。トレランシューズは決して雪渓歩きには向いていない。
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新山から日本海を見下ろす

新山に10時35分着、5分だけ堪能して再び七高山へ。11時に七高山に戻った。帰りは雪渓歩きの多い旧道で下降する。氷の薬師まではザレた急斜面下降、その後整備された歩道を歩き、11時50分に氷の薬師に到着。
さらに降ると長大な雪渓を横断するルートが続く。ガスっていると雪渓の向こうの赤布が見えにくい。自分自身で雪慣れていると思ってはいるが、ストックも軽アイゼンも履かずにキックステップだけでコケずに降りられる雪渓ばかりではなく、3度ほど後ろにひっくり返った。
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楽しい雪渓歩きがずっと続いた

登山口に戻ったのが13時。雪渓のおかげでヒザに負担もかからず、予想よりも早く下山できた。

車で由利高原鉄道の終着駅、矢島駅に向かう。
震災の年にお会いした佐藤まつ子さんに一目会いたかったのだ。まつ子さんは駅舎の中で働いておられたが、ちょうどテレビの取材を受けている最中だった。思い切って声をかけてみたら、かすかに覚えていて下さり、少し会話が弾んだ。再びお会いできて嬉しかった。

外気温が30度を超える中、矢島駅から国道108号線、13号線を走り繋いで山形県に入った。山形盆地を南下し、寒河江から月山方面へ。道の駅「にしかわ」が今夜の宿。温泉施設も隣接しているのでありがたい。ただし、夕食は近くでは摂れず、コンビニで買ったもので簡素に済ませる。明日は月山に登る予定。